イラクに派遣された自衛隊員に自殺が多いって本当?

しんぶん赤旗が報じたところによると、イラクに派遣された自衛隊員のなかで、帰還後の自殺者が増えていることが分かったという。

防衛省広報課は、本紙の問い合わせに、イラクに派兵された自衛隊員(五千五百人)の自殺者が陸上自衛隊で六人、航空自衛隊で一人の合わせて七人と回答しました。

自衛隊の海外派兵が隊員にもたらす精神疾患について警鐘を鳴らした。アメリカのイラク帰還兵にも湾岸戦争症候群と呼ばれる症状の発生が報告されている。

イラクに派遣された自衛隊員にかかる負担は大きく、それにおる何らかの身体的・精神的疾患については否定しないが、自殺数が多いとするという赤旗の指摘には疑問がある。いや、それは真実なのかもしれないが、与えられた数字だけでは判断が出来ない。一般の自衛隊員の自殺率との対比がまったくないからだ

派遣された自衛隊員5500人中、自殺者が7名。およそ800人に1人の割合である。(この5500人が実人数なのか延べ人数なのかいまいち不明だが、述べ派遣人数は陸自5500人、空自1800人というソースもあるので、実人数と仮定。まさか空自の派遣人数を足していない延べ人数?)

一方、自衛隊員の自殺者数はもともと一般人に比べて多く、消える自衛隊員に何が?…外出制限、集団生活、いじめ原因かによると、次のようになっている。

自殺者の増加も深刻だ。防衛庁によると、自衛隊員の年間自殺者は、01年59人、02年78人、03年75人、04年94人、05年93人と増加の傾向にあり、04年の94人が過去最多。06年も4〜8月間の自殺者は36人で、このペースでいけば年間90人に迫る勢いだ。

イラク派兵は、2003年12月から行われたので前述の自殺者の累計も2004年度以降であると仮定して、04年からの3年間の自殺者の累計は94+93+36ということなので、計223名。自衛隊の総数は239,430 人(2005年)なので、自衛隊員の自殺者はおよそ1100人に1人という割合になる自衛隊員の総数には制服組も含まれる)。

つまり、イラクに派遣された自衛隊員の自殺率はそれ以外の自衛隊員に比べて3〜4割自殺率が増加するということになる(利用した数字に誤りが含まれる可能性があるので、そのまま鵜呑みにしないこと)。イラク派遣でかかる過大な負担を考えれば、むしろ低い増加率に抑えられていると見たほうが良いだろう。少なくとも記事から受ける印象よりは低い。

そんなわけで、赤旗の報道は、イラク派遣された自衛隊員の自殺率がきわめて高いという誤解を招きかねない、一面的な記事であると考えられる。いや、本当に有意に高いのかもしれないが(個人的にはきっと有意に高いという結果が出ると思う)、それを立証するためには、少なくとも、一般の自衛隊員の自殺率の推移と派遣隊員の自殺率の推移の比較を行ってもらいたい。このような一面的な数字だけでは、判断のしようがない。