韓国・台湾液晶メーカーの技術力はどの程度なのか?

筆者は「液晶のシャープ」というシャープの液晶に対する一般的なブランドイメージは幻想に過ぎないと信じている。シャープ製の液晶はたとえばIPSアルファテクノロジ製の液晶に比べて優れているというわけではないと思う。シャープ製液晶テレビが他社製品よりも高くても売れるという現状が不思議でならない。液晶技術はコモディティ化しており、巷で信じられているほど技術力に大きな格差は無いと思う。

ところが、今回のCESの展示を見る限り、まだ韓国・台湾メーカーに対しては製造技術上の優位性を保っているのではないかという印象を受けた。韓国・台湾メーカーが第8世代以降の製造技術を保有できるまでかなりの時間がかかるのではないか(ソニーが技術提供しているSamsungは別)。たとえば、108インチAQUOSが発表されると分かるまでは世界最大とアピールする予定だったLGの100インチ液晶(108インチAQUOSが発表されてしまったので、「The World's Largest LCD」という表示が、「World's First…」と変更されたようだ)。サイズ的にはAQUOSに匹敵するが、写真を見ても分かるように中央に貼り合わせ後の継ぎ目があり、量産品までの道のりが長いことを感じさせる。張子の虎である。

シャープが亀山工場において製造技術のブラックボックス化を徹底したため(国内最大の液晶生産拠点「シャープ・亀山工場」訪問記)、今まで日本製の製造機器を利用して、日本メーカーが蓄積した生産技術を流用することで液晶製造を推進してきた韓国・台湾の液晶メーカーは自力で生産技術を蓄積する必要が出てきた。どうもその蓄積が十分に出来ていないのではないかという感じがする。その理由は大画面の液晶テレビがシャープの65インチ以外、他社からまったく商品化されなかったからである(Samsungは82V型、70V型を2年も前に発表済だが未だ発売されていない。最近になって52型が商品化されている)。大型液晶テレビを商品化しようとすると、大型液晶パネルを高い歩留まりで生産する必要があるが、歩留まりの向上に苦しんでいる感がある。

シャープの亀山第一工場の生産ラインの歩留まりは現状で9割以上あり、第二工場も9割以上の達成を目指していくと発表されている(現状で8割程度?)(という記事をどこかで読んだ気がしたのだが、どうしてもソースが見つからない。松下のPDP工場の件と混同した可能性があるので削除して訂正したい)。この数字が達成できたのは数十年にもわたる製造装置などの関係会社との緊密な連携があったからこそであり、こうした連携が無ければ短期間で歩留まりを向上させることは難しい。韓国メーカーが第6世代の亀山第一工場よりもパネルサイズの大きな第7世代工場を稼動させて数年が経過しているが、未だ65インチAQUOSを超えるサイズの液晶テレビの商品化が実現できていない点は、それらを商品として流通できるだけの歩留まりが実現できていないことを示唆しているように思う。

製造技術に関してはシャープにまだ一日の長があるのだろうか?