危うさが漂いつつあるPS3、そしてソニー
先日、ソニーがPS3の出荷数100万台の達成をアナウンスしたことに触れたが、正確には出荷数ではなく、生産出荷台数であるという。生産出荷台数ははてなキーワードにも登録されている。
主に農家とソニーて。生産出荷台数と出荷数、販売数の違いの分かりやすい説明は次のAAが秀逸である。
ヽ(+□::) ソニーはここを発表するお |_|> < | / ̄ ̄\ ____ |\|\|\. ____|\ | ___. | ___|\ . | 小売店. | ___|\ ヽ(゚∀゚)ノ | ロ ロ ロ| |生産出荷 > | |倉庫| | | 出荷 > | ===== | | 販売 > へ客 ) | 工場 |  ̄ ̄ ̄ ̄|/ |_|__|_|  ̄ ̄ ̄|/ . |_| |___|  ̄ ̄ ̄|/ >  ̄ ̄ ̄ ̄ [. □ ] [+□::]ノ 任天堂はこっちを <|_| 発表するお | >
生産出荷したPS3は未だソニーの倉庫内にあり、倉庫から出荷して初めて小売店に並ぶ。小売店で販売されて初めて消費者に渡るのである。ソニーが生産出荷台数を発表し、任天堂が販売台数を発表するところに、両者の勢いの差が現れている気がする。証券市場からも「ソニーはいつも『出荷台数』での発表。Wiiが実売で100万台を達成したのに比べると差をつけられている感は否めない。」という声があるようだ。
Media Createの発表するセールスランキングを累計したものが下記の表である。1/7まででPS3が50万台強、Wiiが110万台の販売を記録しているようだ。
Xbox 360 |
PS3 | Wii | |
---|---|---|---|
〜'06/3Q | 143,625 | ||
2006/10 | 8,891 | ||
〜11/05 | 6,580 | ||
〜11/12 | 3,864 | 81,639 | |
〜11/19 | 4,050 | 42,099 | |
〜11/26 | 7,007 | 32,662 | |
〜12/03 | 4,053 | 31,436 | 350,358 |
〜12/10 | 35,343 | 50,171 | 85,439 |
〜12/17 | 17,168 | 70,942 | 108,237 |
〜12/24 | 17,213 | 76,882 | 279,277 |
〜12/31 | 16,909 | 71,727 | 96,332 |
〜01/07 | 18,235 | 69,944 | 195,331 |
累計 | 282,938 | 527,502 | 1,114,974 |
PS3の販売台数がWiiの半分しかなくてもPS3はWiiの2倍以上の値段なので、売上高で言えば互角であるというPS3陣営の反論をよく目にする。しかし、ソフトウェアベンダにとって重要なのは対応ハードの稼動数であり売上高ではない。多額の開発費を投じたソフトがどれだけ売れるかはソフトウェアベンダにとって死活問題であり、少しでも母数の大きなハードに対してソフトを供給しようとするのは当然の経営判断である。ゲーム機ビジネスにおいて、売上高を論じてもほとんど意味は無い。
日本国内では苦しい状況が続いているXbox 360だが、全世界に目を向けると、今まででもっとも売れているハードである。Videogame Chartsで詳細が見られるが、本日時点でXbox 360が839万台、Wiiが367万台、PS3が158万台の販売台数となっており、Wiiの倍以上、PS3の5倍以上売れていることが分かる。Xbox 360が売れていないのは日本だけなのだ。
Xbox 360にはPC譲りのきわめて充実した開発環境が用意されており、他のプラットフォームに比べて格段にソフト開発がしやすいという利点がある。PS3の開発が極めて難しいのと対照的だ。日本では日本向けソフトの弾不足から普及にはいたっていないが、少なくとも現時点では3つのハードの中で最も優れたプラットフォームであると思う。
とはいえ、XBOX360が今から日本市場において普及するとは考えにくい。日本向けソフトの供給計画が乏しいからである。一方、Wiiは多くの魅力的なラインナップが控えており、万全の体制であるように見える。PS3が巻き返すためには、ハードの値下げ等による母数の拡大と、ソフトウェアベンダの負担の軽減(開発機材・ライセンス料のディスカウント、ライブラリ・開発環境の充実、広告費支援、プロモーション活動)などが欠かせないと思う。ここで躓くと、Cell開発に投じられた莫大な投資回収の目処が立たず、ソニー本体の経営を揺るがしかねない。内部でソフトとハードの権力争いなんかしている余裕なんて無いはずだが、さて。