あるある大事典:「納豆ダイエット」は捏造 関西テレビ

最近どこに行っても納豆が売り切れという異常事態が続いていたが、その火付け役となったあるある大辞典納豆ダイエットの効果説明が捏造であることが判明した(関西テレビ 視聴者の皆様へ)。

そもそもテレビ番組における科学のフリをした効果検証は、科学的に見れば問題だらけでとても意味のある検証とはいえないお粗末なものばかりである。今回の件もまた消費者がテレビ局に騙されて…と生暖かい目で空の納豆コーナーを眺めていたのだが、テレビ局が捏造を認め謝罪する事態に発展したのは驚きだ。納豆の効果説明が捏造なら、それ以前の数多のダイエット法、健康法、その他もろもろも捏造である。

関西テレビ社長は会見に及んでも捏造を認めようとせず、捏造を渋々認めたのは、開始から約20分後、再三にわたって問いつめられた末だったという。今までずっと同じように番組を作ってきて、視聴者の関心を引き付けるためには、多少の演出は許されるという姿勢でやってきたテレビ局にとって、なぜいまさら問題になるのか分からないという感じではなかろうか。

この度の捏造部分は次のとおり。

  1. 被験者がやせたことを示すのに別人の写真を使用
  2. 米の大学教授の発言の日本語訳の一部を捏造
  3. 被験者の一部の中性脂肪値が正常値になったとしたが、測定せず
  4. 納豆を朝2パックまとめて食べた場合と、朝晩1パックずつ食べた場合の比較で、被験者の血中イソフラボン濃度の結果を捏造
  5. 被験者の血中のDHEA量検査のデータを捏造、また、許可を得ずグラフを引用

嘘八百であり、大学教授の論文捏造事件を厳しく糾弾してきた当事者としての自覚がまるで無いようだ。

ある薬品が本当に効果があるかどうか確かめるためにはプラセボ効果(偽薬効果)を排除しなければならない。一般的な薬の効果の6割は人の思い込み(これはお医者さんが出してくれた薬だから効くに違いない)によるものと言われ、新薬試験などではこの効果を排除して新薬の性能を検査しなければならない。そのため、被験者を2群に分け、一方には検査対象の薬を、もう一方には偽薬(ブドウ糖や乳糖等)を与え、両者の間に有意な差が出るか確かめる(比較対照試験)。2群の被験者に対象薬と偽薬を時期をずらして交互に与え、結果を集計するクロスオーバー比較試験も有効だ。これらの試験では、被験者にも評価者にも、投与されているものが偽薬か否かを知らせない二重盲検法(ダブルブラインド法)を採用すべきである。そもそもサンプル数がぜんぜん足りていないのは大問題である。

テレビ番組の検証では、上記で示したような配慮が十分になされていることは稀であり、あくまで効果を分かりやすく伝えるデモに過ぎない。デモなので捏造でも何でもOKなのである。ゲストに大学教授などを呼んで権威付けをして、視聴者を騙す。怪しげな通販番組とノリは同じである。通販番組と同じ心構えで、科学のフリをした番組を作っているものだから、関西テレビの社長は何が悪かったのか理解出来ていない。彼からすれば騙される視聴者が悪いのだ。

番組の中で取り上げられていたナットウキナーゼが血栓を溶かし、血液をサラサラにするという話も怪しい限りだ。あるある大辞典(2001年5月23日放送)では試験管内で血栓がナットウキナーゼにより溶ける様子を放映したが、分子量の大きなナットウキナーゼは血液中に吸収されないので試験管の中で人為的に混ぜ合わされて血栓が溶けたところでまったく意味が無い。納豆を食べて血液がサラサラになるわけが無いのである。

科学的に怪しい話を無責任に垂れ流すテレビにはうんざりだ。放送された内容が科学的に見て妥当であるかを審査する有識者からなる第三者機関を設置し、そうした番組の排除を推進すべきである。二重、三重の番組内容チェック態勢も担当者の科学的素養が不足していたり、コンプライアンス意識に欠けていては無意味だ。今回の件がテレビ番組に対する厳格なチェック機構導入の契機になればよいが。