『幸せのちから』 -the PURSUIT of HAPPYNESS-

超映画批評で85点という高得点を挙げた、『幸せのちから』を見た。超映画批評では、本映画のコピーにも記載されているある事柄は重要なネタばれであり、本映画の魅力を大きく損なう恐れがあると警告しているので、この主人公の男性について聞いたことが無い幸運な人は、すべての情報をシャットアウトして今すぐ映画館情報をチェック、映画館に足を運ぶのがよいかもしれない(オフィシャルサイトを見るとか、評判をググって見るとかもっての外)。その際、映画館のポスターも見てはならない。筆者は注意していたのにポスターにやられてしまった。

米国人Chris Gardnerの半生を描いた本作は、絶望的な状況においてもその絆を少しも緩めることの無い父子の生活を描いている。主人公Chris役のWill Smithとその子供Christopher役のJaden Christopher Syre Smithは実の親子であり、息もぴったりだ。今日寝るところにも困る絶望的な状況で、Chrisは一発逆転をめざし、証券会社のトレーダーの研修生となる。6ヶ月の研修中は無給で、しかも研修終了後正社員として採用されるのはわずか1名。

Chrisはここで本当に真剣に努力をする。筆者は今までの人生で彼の半分も真剣に何かに打ち込んだことはないと断言できる。彼は彼の子供の生活を守るために文字通り不退転の決意で日夜猛勉強に明け暮れる。これだけ努力してももし最後の一人に選ばれなかったとしたら…悪い方向にばかり想像力は働くものだ。

本編の最後、Will Smithの演技は決して派手なものではないが、彼の置かれている境遇に完全にシンクロしていた筆者は、彼のとった控えめな行動が我が事のように実感できた。筆者も同じ行動を取ったに違いない。そこには確かに抑えきれない感情の発露があった。ラストシーンの描写はきわめて自然で、必然性のあるものだ。

本作品は派手なアクションがあるわけではなく*1、どちらかと言えば淡々とストーリーが描かれる。しかし、そうした静的な描写が視聴者の心を動かすことが出来ることを示した佳作であるように思う。以下は原作本で、映画では描かれなかった部分に光が当てられているが、個人的には映画のほうがストレートに心に響く出来となっていたと思うので、映画を見てどうしても彼の自叙伝が読みたいと思った人が手に取ればよいと思う。

幸せのちから

幸せのちから

*1:ただし、ハリウッド的な誇張された描写が排除されているわけではない