世界同時株安に見る情報視覚化の威力

27日の中国上海市場の株価急落を受けてニューヨーク市場は大暴落、翌28日東京株式市場は全面安となり、終値は前日比500円以上下落した。中国発の世界同時株安の発端である。過熱気味であった中国バブル崩壊への警戒に加え、米国の景気後退への懸念、そして円キャリー取引の巻き戻しなどが複合的に影響したと見られている。

上図は2月28日のNikkei225 MarketMap/日経平均225銘柄のマップスクリーンショットである。このサイトでは情報視覚化の一手法を用いて日経平均255銘柄の株価を示している。FLASHインタラクティブに動くので、初めて知る人は是非アクセスして試して見てほしい。

マップにおいて、色のついたセルは一つの企業を示す。セルにマウスをあわせると、その企業の株価や関連する記事などを読むことが出来る。セルの大きさはその企業の時価総額の大きさを表し、セルの色は前日比の株価の上昇/下落率を表している。緑が上昇で、赤が下落である。言うまでも無く真っ赤、唯一2銘柄(日ハムと日清紡)だけが踏みとどまっていることが一目瞭然だ。大量に株を保有している人は文字通り目の前が真っ赤になったことだろう。

情報視覚化(Information Visualization)は抽象的な情報や大量の情報を計算機上でわかりやすく伝えるための技術である。計算機上での科学シミュレーションも情報視覚化の一例であるといえるが、データを色や大きさにマッピングさせる手法が一般的だ。特に全体外観(context)と詳細閲覧(forcus)を同時に満たすような、あるいはシームレスに切り替えることが出来るような仕組みが探求されている。

Nikkei225 MarketMap/日経平均225銘柄のマップの元ネタは1990年代に考案されたTreemapである。Treemapは階層構造の情報視覚化手法であり、色と面積を用いて全体の傾向を一目瞭然で示すことが出来る。

しばらく落ち着いたかに見えた株価は3月5日に再び全面安の様相を見せる。マップは再び真っ赤に染まったわけだが、翌6日には急反発し、世界同時株安は一段落することになった。その2日間のマップを並べたのが次の図である。左が3月5日(前日比-575.68円)、右が翌6日(前日比+202.25円)である。

全体的に上昇に転じたことが一目で分かる上に、もう少し注意深く見てみれば、銀行、食料品、医薬品、不動産などの回復率が弱いことが分かる。医薬品は他と比べると下落率もさほど大きくなかったようだ。こうした傾向の把握は、数字がずらずらと並んだシートを見てもなかなか一目で把握することは難しい。ちょっと工夫をすることで見えなかったモノが見えるようになるところが情報視覚化の面白いところである。

Treemapに関しては、The Hive GroupLab EscapeなどTreemapを用いたソフトウェアを販売する会社があるし、Windows向けにはWinDirStatDiskMapperSpaceSpaceMongerSequoiaViewDirGraphPanopticon Explorerといった多数のオンラインソフトがある。また、SearchMapr (beta) は検索結果をTreemapで表示する機能を持った検索エンジンである。残念ながら、株式市場の視覚化ほどにはうまくいっていないようだが。

情報視覚化に関しては、最近米Appleに転職された増井氏の情報視覚化チュートリアル資料が若干古いが国内では最もよくまとまっている。同資料に基づくiv.xight.org - 情報視覚化も参考になる。残念ながらこれらの資料は静止画像による紹介が主で、肝心の動きが分からない。Zooming InterfaceのPadなど動いているところを見てみなければなかなかそのすごさが伝わらないと思うが、誰か情報視覚化の説明資料も視覚化してくれないものだろうか。