円周率は3.05より大きいことを証明せよ。

円周率は3.05より大きいことを証明せよ。

電車のつり広告に乗っていた2003年の東大の入試問題だが、問題は実にシンプルで美しい。ただ、おそらく受験生の大半が行うであろう解法がすぐに浮かんでしまうのが難点だ。おそらく正答率は9割を超えるだろうし、独創的な回答はあまり期待できそうにないので、入試問題としては問題がある。

実際、乗り合わせた同僚に聞いても、一様に円に内接する6角形…は足りないから12角形を考えて…という無難な回答をみんな真っ先に思いついたようだ。もうちょっとエレガントな回答が出てこないものだろうか
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半径1/2の円の円周ll=\piである。この円に内接する正12角形を考えるとその辺の長さLは次で表される。

L=12\sin{15}=12\sqrt{\frac{1-\cos{30}}{2}}=6\sqrt{2-\sqrt{3}}

ルートが鬱陶しいのでL^2を考え、\sqrt{3}<1.74なので、

L^2=36(2-\sqrt{3})>36(2-1.74)=9.36>9.3025=(3.05)^2

よって、L>3.05と証明される。円周lが円を内接する正12角形の辺の長さLよりも長いことは明らかであるので、

l = \pi > L > 3.05

 \pi > 3.05

大受験生なら問題見た瞬間この解法に行き着き、2,3分で解いてしまうだろう。つり広告で人の目を引く効果はあると思うが、入試問題として適切かと問われれば、東大には難易度が低すぎるのであまり良くない問題と言える。ちなみに城南予備校による模範解答では正8角形を利用しているようで、筆者の解答と同じくエレガントさのかけらもない。まだこちらの珍解答例の方が面白い(もちろん不正解だが)。

数学者はいかにエレガントに数式を証明するかに関して、情熱を傾ける。フェルマーの最終定理が証明されるまでを描いた『フェルマーの最終定理 (新潮文庫)』では、1976年のKenneth AppelとWolfgang Hakenによる四色定理の証明において、コンピュータを用いて全パタンを洗い出すという力業に失望したという逸話が載っていたが、やはり一見複雑な事象を誰もが思いつかない視点からシンプルに証明するエレガントさを求めたいところだ。ちなみに四色定理のコンピュータを用いない証明は未だ発見されていないので、エレガントな解法を見つけた人は是非発表してもらいたい。

三平方の定理には数百の異なった証明方法が知られているが、中でも正方形を用いた証明は小学生でも理解できるという点で筆者のお気に入りだ。

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右の図のような一辺がa+bと表される正方形を考える。正方形の面積は(a+b)^2と表されるが、これは4つの黄色い三角形と真ん中の青い正方形の面積の和と等しい。すなわち、

(a+b)^2 = 4\frac{ab}{2} + c^2

これを整理すると

 a^2+2ab+b^2=2ab + c^2

a^2 + b^2 = c^2

実にエレガントだ。こういうエレガントさを競うような問題にはならないものだろうか。