堀江被告に2年6月の実刑判決

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各紙で報道されているが、ライブドア前社長堀江貴文被告に東京地裁は2年6月の実刑判決を言い渡した。虚偽の発表を繰り返し、まさに濡れ手で粟の感覚で投資家から巨額の資金を集めた責任は重い。

米国で同様な罪で裁かれたら懲役20年はいくと見られる詐欺事件で2年6月の実刑判決は個人的にはまだ甘いと思う。牛島信弁護士によれば、「今の日本の法律では人を殺した、金を直接奪ったということではなく、人為的に作られたマーケットのルールを破ったということでは、それほど厳しい処罰はできない」ということで、彼を処罰する適切な法整備が出来ていないということなので、求刑の4年以上は難しいのかもしれないが、それなら4年間塀の中に放り込んでいてほしい。

個人的には、マネーゲームで私腹を肥やした堀江被告を許せない心情があるのだが、それは期待への裏切りへの反感である。毎日新聞に堀江被告の日常について次のように報じられている。

事業への意欲も変わらず、宇宙関連事業に関心を示すとともに、人の寿命や「不老長寿」などを科学的に研究する「ライフサイエンス」分野に興味を寄せている。「バイオテクノロジー」や「サイボーグ技術」に関する海外の科学者の著作を熱心に読み、意欲を奮い立たせていたという。

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/livedoor/news/20070316dde041040052000c.html

このあたりの興味分野はまさに筆者の興味分野と重複するのだ。実際、彼はJAXAが主催するシンポジウム「見上げる宇宙から使う宇宙へ2004」の基調講演において早ければ3年以内、遅くとも5年以内に民間企業による有人宇宙飛行の実現を目指すと述べており、筆者はその可能性に心躍らせたものだ。彼のような行動力と資金力のある人間が宇宙開発に参入することで、日本の宇宙開発が変われるかもしれない、そう期待したのだ。

「有人宇宙飛行自体は日本の技術力があれば、10年以上前に実現できたはず。『月に行けることはわかっている』と結論だけ言うのではなくてやってみること。インターネットも10年前には将来が予想できたが実装して広めることがすごい。iモードだって、初めて見たときは『フツーじゃん』と思ったが携帯端末に搭載されると、思ってもみなかった利用方法が現われた」とし、そうした“成果物”を生み出せなかったことが、日本の宇宙開発の遅れにつながったのではないかと述べた

ライブドアが有人宇宙飛行に“新規参入”~堀江社長「早ければ3年以内に」

一般ウケする成果物を生み出せなかったのが日本の宇宙開発の遅れにつながったという指摘についてはもっともで、とにかく何でもやってみるというバイタリティあふれた新規参入者による宇宙開発の活性化を期待したのは筆者だけではないだろう。どうも口先だけで信用がおけないところはあるものの、停滞した業界を引っかき回す爆弾として筆者は大いに期待していたのだ。

ところがその爆弾は、筆者が想定していたよりもずっとタチの悪いものだった。ライブドアという彼の立脚点そのものが嘘で塗り固められた砂上の楼閣だったわけだ。特に筆者に直接的な被害があったわけではないが、期待していただけに裏切られた感が強い。個人的に重い実刑判決を望んでいたので、今回の実刑判決は評価したい。

堀江被告の高井弁護士は実刑判決を受けて、「あいまいな事実認定で実刑となれば、新しいことは何もできない。若い人たちは萎縮してチャレンジする活力がそがれると危惧します」と述べたようだが、ルール違反をしてその罰を受けるのは当然のことであり、当然のことを示すことで若い人がチャレンジする活力が削がれるなどあり得ない。

そもそも「あいまいな事実認定」を問題にする時点で、彼が堀江被告の無実を信じていないように見える。堀江被告が関与していた事実はあったにせよ、その事実を証明するだけの確固たる証拠がないと主張しているように見える。裁判の争点がそこにあったことは確かだが、一般向けのアピールならば、「全く不正に関与していない人間が実刑判決を受けるなんて日本の司法はおかしい」ぐらいの事を言ってもいいぐらいだ。グレーゾーンを広くとった方が、若い人が違法スレスレの事業に参入しやすくなるとでも主張したいのだろうか。寝言は寝て言え。