空自次期戦闘機(F-X)にユーロファイターの目はあるのか?

LM-72007-03-22


過去2回に渡り取り上げてきた航空自衛隊次期主力戦闘機(F-X)の選定作業だが、混迷の度合いを深めているようだ。

NNAによれば、防衛省はF-Xとしてユーロファイター・タイフーンの導入を検討しているという。防衛省としてはF-22の導入を図りたいが、F-22は米国議会の反対により輸出許可が得られていない状況であり、競合機への鞍替えをちらつかせることで輸出許可の取得、有利な価格交渉を進めたい算段のようだ。

 トーマス・シーファー駐日米国大使は「日本が最終的に『F22』を選ぶことを望む」とコメント。「(日米は安全保障条約を結んでいるため)相互運用性の面で他の国の技術を採用するのは現実的でない」と指摘している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070320-00000015-nna-int

F/A-18E/FおよびF-15FXの米国製戦闘機の導入の可能性がある中で、米国大使がF-22を選択することを望むと発言するのは、ボーイング社に対する営業妨害かと思ったが、FINANTIAL TIMESの元記事を見ると「F-22を含む米国製技術」となっており、F-22に限定したものではないようだ。

Mr Schieffer hoped Japan would end up buying a combination of US technology, including F-22s, if congressional opposition could be overcome.

http://www.ft.com/cms/s/332c3534-d58e-11db-a5c6-000b5df10621.html

ただし、シーファー駐日大使の言及には「議会の反対が解消されれば」という前提が付加されており、米国議会が輸出許可を与えるかどうかが最大のネックであることは間違いない。

一方、Jane'sは21日、防衛省がF-X候補をユーロファイター・タイフーン、F/A-18E/F、F-15Eの3機種に絞ったと伝え、ただし、F-22を導入するロビイング活動はまだ排除されていないと報じた。

Speaking on 20 March, the Japanese MoD source refused to say whether interest in the F-22 had been discontinued. "We have decided on three aircraft to meet Japan's next-generation fighter requirements. But the F-22 is a modern, hi-tech fighter - so yes, of course, we are very interested. But of lot of things would need to be cleared before we would have a chance of acquiring the F-22."

Global Defence News and Defence Headlines | Jane's 360

防衛省関係者はF-22導入するチャンスを得るためには多くのことがクリアにならなければならないとしており、F-22に未練を残しつつも、導入が困難であることを示唆しているようにみえる。ユーロファイターはヨーロッパ製機体であることから防衛省の導入はないと考えるのが妥当ではあるが、F-22の導入が不可能であるならば、ユーロファイター導入というウルトラCが見られるかもしれない。

空自次期戦闘機(F-X)の比較検討で示したように、ユーロファイターは性能的にはF/A-18E/FやF-15FXに比べても勝っており、中国の主力戦闘機となるSu-35に対して4.5:1という優秀なキルレシオを誇っている。なによりユーロファイター社が技術移転などを含めて日本側の要望を可能な限り受け入れると言う姿勢を示していることは、国内の航空宇宙産業の維持・育成の観点から見て魅力的である。場合によってはユーロファイターの導入検討は単なる当て馬でなくなるかもしれない。

F-Xの選定は今年の半ばには行われる予定である。21世紀の日本を守る翼は何になるのだろうか。