嘘に塗り固められた疑似科学番組の実態

LM-72007-03-23


朝日新聞が報じたところによれば、「発掘!あるある大事典2」の捏造問題で、関西テレビから委嘱された社外有識者による調査委員会は23日、過去の放送分すべてを検証した報告書を公表した。それによると問題発覚の発端となった納豆ダイエット以外に15件で問題があったと指摘されている。

指摘された番組は以下の表の通り。

年・月・日 題名 問題の種類
2005-10-16 有酸素運動の新理論 捏造
2005-12-11 2005ダイエット総決算SP 捏造
2006-02-19 衝撃!味噌汁でヤセる?! 捏造
2007-01-07 納豆ダイエット 捏造
2005-06-12 寒天で本当にヤセるのか!? データ改竄
2005-08-07 毒抜きで体質改善 データ改竄
2006-08-20 チョコレートで本当にヤセるのか!? データ改竄
2006-10-22 みかんorリンゴ データ改竄
2005-01-09 低炭水化物ダイエット 不適切表現
2005-02-20 体脂肪を減らす救世主 不適切表現
2005-03-20 冷え人間は太るし老ける!? 不適切表現
2005-04-17 夢診断でわかる!本当のあなた 不適切表現
2006-01-15 ダイエット緊急企画 不適切表現
2006-03-26 ワサビで10才若返る! 不適切表現
2006-04-30 カロリーの新常識 不適切表現
2006-10-08 足裏刺激でヤセる 不適切表現

調査委が指摘した15件の内訳は、「2005ダイエット総決算SP」(05年12月放送)など、日本語のボイスオーバー(吹き替え)による捏造が3件、「寒天で本当にヤセるのか!?」(05年6月放送)など、実験はしたものの番組構成に合わせてデータを操作した「改ざん」が4件。これらはいずれも「納豆ダイエット」の制作会社「アジト」が担当していた。残り8件については、実験方法が不適切だったり、研究者の確認をとらなかったり、などの問題があったとした。

http://www.asahi.com/national/update/0323/TKY200703230292.html

調査委員会の調査によって判明した捏造および改竄に関してはすべて同一の制作会社「アジト」が担当していたとされている。しかし、すでに報道されたものだけでも、1998年10月25日放送「レタス快眠」2001年3月11日放送「あずき頭活性化」などに関する報告がない。前身番組「発掘!あるある大事典」に関する検証は行っていないため結果に含まれていないだけかもしれないが、間の空白期間に全く同様の捏造・改竄を行っていないとは考えにくく、もっと以前から慣例的にこうした捏造や改竄が行われていたと考える方が自然だ

総務相は「予想より多くの新たな捏造が報告されていた」と述べたが、これが正直なコメントだとしたらおめでたいにもほどがある。今回明らかになった問題は氷山の一角に過ぎないはずだ。そもそも関西テレビは2月に2度にわたって総務省に報告書を提出しており、過去520回の放送すべてに再調査した結果として計4件に問題が見られたとしていた。それが今回の調査で4倍にも膨れあがったのであるテレビ局側のチェックがまともに機能していない証左であろう。適当な調査でお茶を濁しておこうという、テレビ局の全く反省の色が見えない姿勢には呆れるしかない。

そもそも実験方法が不適切だったりした放送がたった8件なワケがない。二重盲検法(ダブルブラインド法)さえもおこなわない実験結果が適切なものか。科学的には全く意味のない単なるデモンストレーションを、さも科学的根拠のある実験のように見せかける演出だけでも真っ黒だ。とにかく中途半端な形で幕引きし、いい加減な疑似科学番組が氾濫する現状が一向に改善されないような事態だけは避けてほしい。今回のあるある問題は日本のテレビ番組をより健全で有意義なものに変える大きなチャンスだ。総務省はこのチャンスを最大限利用し、テレビ放送を真に信頼できるメディアへと変革してもらいたい。