PS3の在庫を集めるだけで20PFLOPS!(≒世界最速スパコンBlueGene/Lの60倍)

@ITによれば、独立行政法人理化学研究所は2012年までに10PFLOPSの演算能力を持つスパコンを神戸市ポートアイランドに開発するようだ(次世代スーパーコンピュータ施設の立地地点を神戸に決定 | 独立行政法人 理化学研究所プレスリリース)。

TOP500 Supercomputing SitesスパコンランキングトップはIBMBlueGene/Lで、131,072個のCPUを持ち、演算能力は367TFLOPSとなっている。TOP500ランキングにおいては長期にわたりNECの地球コンピュータがトップを維持し続けたのだが、最近はIBMが独占状態にあり、日本勢はGSIC Centerが82TFLOPSで9位に入るのがやっとの状況だ。往年の地球シミュレータは14位である。理研の新スパコンはこの現状を一気に打破すべく圧倒的な性能を持って世界最速を狙うものだ。

ちなみに理研MDGRAPE-3は1PFLOPSを誇り、数値上はトップのBlueGene/Lの3倍速いが、TOP500ランキングで採用されているベンチマークソフトであるLINPACKが動作しないため、TOP500ランキングには登場していない。MDGRAPE-3は分子動力学シミュレーション専用コンピュータであり、汎用的な用途に用いるものでなく、この演算能力も特定の種類の演算に特化されたことにより達成されたものだ。

米国に奪われて久しいトップの座を奪還するのに投じられる予算は1150億円。これで10PFLOPSの新型スパコンを構築する予定だ。ただ、米国もペタフロップスマシンの開発を続けており、本当にトップの性能を実現できるかどうかは不透明だ。

グリッドコンピューティングを利用してタンパク質の解析を行うFolding@Homeでは、現在参加しているCPUの数とそれにより提供される処理能力(TFLOPS)が公開されている。これによれば2007年03月28日現在49,924個のCPUで357TFLOPSを叩き出している。現在トップの演算能力を提供するスパコンと同等の性能が各家庭にあるPS3の空き時間を利用することで得られるのだ。

PS3今年度中に全世界で600万台生産出荷を達成する予定だが、Videogame Chartsによれば、今日現在280万台の販売数にとどまっているようだ。仮に計画通り生産出荷が進んだと仮定すれば、全世界で320万台以上の在庫が眠っている計算になる*1

どうせ在庫で眠っているのならば、この320万台のPS3Folding@Homeにつぎ込めば、22.9PFLOPSを実現することが出来る。1,150億円なんて莫大な予算を使わずとも、SONYのかかえる在庫を有効活用するだけで、現在のTOP500ランキングの第一位であるBlueGene/Lの60倍以上という圧倒的な性能を叩き出すことができるのだ

Folding@Homeでは、世界中よりかき集めた計算機リソースを用いてタンパク質の折り畳み、異常折り畳みおよび関連の疾病の理解を目指している。これはアルツハイマー病、BSE、CJD、ALS、ハンチントン病パーキンソン病、癌などの難病の治療方法を見いだすための有力な情報となると期待されている。

どうもPS3はゲーム制作環境整備の遅れにより、PS3の計算能力を活かしたゲームを作成するのが難しくディベロッパーの離脱が始まっているようなので、Folding@Homeのように単純に計算を繰り返すノードとして利用するのがいいかもしれない。在庫も有効活用できて、医療の発展への貢献も出来る、非常に良いアイデアだと思うが、駄目だろうか。

*1:いくら何でもこんなには無いと思う