エックス線鑑定機を騙す偽造金塊

朝日新聞によれば金の延べ板を偽造し、多額の現金をだまし取ったとして、大阪府警は、東京都の貴金属ブローカーの男ら計6人を詐欺や同幇助の疑いで逮捕、延べ板の偽造拠点とみられる都内の宝石加工会社を家宅捜索した。大阪府内などで十数件の被害が相次いでいたという。

偽装された延べ板は表面のみ純金で覆われ、中身は金(19.32g/cm3) と比重がほぼ同じタングステン(19.3g/cm3)の固まりだという。1kgの偽造金塊は127gの金と873gのタングステンで出来ていたのだ。1kgの金の体積は51.76cm3となるが、偽物は51.81cm3となる*1。極めて微妙な差しか生まれない。

延べ板には、世界中で流通している「SWISS BANK CORPORATION」の刻印があり、形状も本物そっくりだった。中には金の比重に極めて近いタングステンの黒い塊(873グラム)があり、その上を純金(127グラム)で覆っていた。エックス線鑑定機や電気抵抗を調べる導電率計でも金と判定されるという。ただ、流通している延べ板に比べ、表面が鏡のように光ったり、刻印がぼやけたりしている特徴があるという。

偽モノ 金塊?金の延べ板を質屋で現金化・・・!

日本金地金流通協会は自社の鑑定機でも判別できないとして注意喚起の警告を会員企業に送付したというが、鑑定機が騙されるとなればやっかいだ。偽装紙幣の作成には高度な印刷技術と専用設備が必要となるが、金の延べ板ならばそれほど高度な技術も設備も必要ないだろう。そこに目を付けたブローカーは目の付け所がいい。

日本金地金流通協会によれば、2001年実績で金の年間生産量は約2,600トン。有史以来、世界の主要な産地のすべての産金を合計しても、およそ146,000トンと見込まれている。その容積は50mプール3杯半くらいにしかならない。世界中の金をかき集めてもたったこれだけなのだ。

金の埋蔵量は、あと60,000トン程度と推定されている。ところが未採掘の鉱脈のある場所は、地底深く何千メートル、海底の火山脈の近くやアフリカの奥地、さらには3,000メートル以上もある山塊などであり、今後は金の採掘がますます困難になっていくものと懸念されているという。

核融合が一般的になるか、どこかの宇宙で金の塊で構成された小惑星でも見つかるかしない限り、金の相場は長期的には上がっていくだろう。とするならば、投資も犯罪も金をターゲットにすることが望ましいと言うことになる。

ちなみにプラチナはさらに希少で、今までの採掘量がわずか4,200トン、埋蔵量は16,000トンとされている。プラチナの比重は21.45g/cm3イリジウムが比較的近い比重を持つ(22.50g/cm3)が誤差が大きい。しかもイリジウムは高く希少なので使えない。ここからも金に目を付けるのは正解という事が言えそうだ。

タングステンを使う今回の手口は公知になってしまったので、大がかりには使えないだろうが、アクセサリなどの小物には応用可能だろう。知らないだけで、既に流通しているのかも知れない。

*1:重量の有効数字が足りないので数値は参考