米国に比べ割高な年会費は、Amazon依存症ハイリスク層を識別する

LM-72007-06-08


Amazonは年会費3,900円で配送料完全無料になるAmazonプライムを始めた。

指定時間までの注文で、

  • 関東地方*は、当日または翌日にお届け (*一部地域を除く)
  • 関東地方以外の全国*は、1〜3日後までにお届け (*一部地域を除く)
  • 沖縄および離島は通常配送が無料
Amazon.co.jp: Amazon Prime

ということなので、通常350円かかる「お急ぎ便」が何度でも使い放題。また、1,500円未満の場合にかかる配送料(300円)もかからなくなる。筆者は関東在住なので、通常の処理でも1〜3日あれば配送されるため「お急ぎ便」のメリットが無く利用したことが無いのだが、配送されるのに長時間かかる人には良いサービスかも知れない(*一部地域を除く)。年会費3,900円ということなので1年間で「お急ぎ便」12回以上、もしくは「1,500円未満の通常配送」13回以上で元が取れる計算になるが、よっぽどのヘビーユーザーでなければメリットがない気がする。

筆者は大体月に1万円以上なんだかんだとAmazonで購入し、1年間で数十回はAmazonからの荷物を受け取るが、普通にカートに商品を入れていけば1,500円以上になるし(ハードカバーなら一発だ)、1日も早く欲しいと思う事は無いのでそれほど魅力的なサービスとは思えない。これを使ってメリットが出るのは、お急ぎ便を常用するようなヘビーユーザーぐらいだろう。

先行して開始された米国では79ドルという日本に比べて割高な年会費にも関わらず好評で、米Amazon.comの創業者兼CEOのJeff Bezos氏は「米国で好評を得ているからこそ日本でも導入した」としている。しかし、国土の広い米国において本を購入した場合、通常の配送(3〜5日)で3ドル+0.99ドル/アイテム、急行便(2日)で9.99ドル+1.99ドル/アイテム、特急便(1日)で12.99ドル+4.99ドル/アイテムとなっており、配送コストが日本とは全然異なる。米国のAmazonプライムでは年間79ドルで急行便(2日)が使い放題となるため、7回も使えば元が取れるし配送期間の短縮効果も日本に比べて大きいと考えられる。また、米国では25ドルを超えないと通常配送料が無料にならない点も大きい。日本とは状況が異なるのだ。米国と同様の急行便7回分の2,500円程度ではなく3,900円という価格設定はむしろ割高であり、記者発表における米国の79ドルとの比較は、安いと錯覚させる巧妙な情報操作だ。

Amazon プライムについてBezos氏は、「何度利用しても発送料が発生しない『使い放題』のサービス。これまでのように、(配送料を無料とするために)まとめ注文する必要がなくなる」とメリットを強調。「短期的に見ると、配送料を負担することはコスト増につながるが、今後発送センターを増設することで、発送料を下げられる」として、長期的な視点では意味のある投資であるとアピールした。

年会費3,900円で配送料完全無料、Amazon.co.jpが会員制プログラム

Amazonも配送期間短縮ではなく、配送料を無料にするためのまとめ買いの手間が要らなくなることをメリットとして強調しており、1-Click注文による売上増を期待していることがよく分かる。しかし、お急ぎ便を常用し年会費3,900円がペイできるユーザーは元々Amazonヘビーユーザーである可能性が高く、Amazonの売上が劇的に向上するとは思えない。Amazonとしてはライトユーザーが、Amazonプライムの利用によりヘビーユーザーへと成長することを期待しているのだろうが、それにしては年会費の設定がやや高い。

このハードルの高さは、Amazon依存症に陥る可能性の高いユーザー(ハイリスク層)を識別する試金石なのかも知れない。ちょっと高いな〜なんて思いつつも、まとめ買いをする手間が無くなるなら3,900円払ってプライム会員になろうかなんてユーザーは、手間が無くなるなら多少のコストを払うことを厭わない程度には余裕があるので、衝動買いの罠にはまりヘビーユーザーへとレベルアップする可能性が高いのだろう。こうしたユーザーを囲い込むことが出来れば、Amazonは将来にわたって安泰である。

年会費3,900円のAmazonプライムにちょっとでも心を動かされた人は、Amazon依存症のハイリスク層だ。ご利用は計画的に。