フジモリ元大統領が参議院議員ってあり?
朝日新聞の報道によれば、国民新党は18日、フジモリ元ペルー大統領に参院選への立候補を要請したという。国民新党の関係者がチリ・サンディエゴのフジモリ氏の自宅を訪れ、1時間半会談し出馬を要請したようだ。東京選挙区か比例区での擁立が検討されているという。
Wikipediaによれば、フジモリ氏は1990年新党Cambio 90を結成し大統領に初当選、フジショックと呼ばれる大改革を断行してペルーの経済を一気に立て直した。1992年には大統領の権限を強化するためにクーデターを実行、国民からは支持を得たものの、一時国際社会から孤立することとなった(まもなく国際関係は修復)。
1995年の大統領選には圧勝したが、人気はかげりを見せ始め、1996年にはペルー日本大使公邸占拠事件が発生、翌年4月に特殊部隊が突入、人質1人、特殊部隊2人が犠牲になったが、犯行グループは全員射殺され、最後まで拘束されていた人質71人が開放された。この際、無抵抗の犯行グループが虐殺されたのではないかという疑惑があり、後に人道犯罪の罪で訴追されることとなる。
2000年には憲法解釈の強引な変更を行い3選を達成したが、投票に不正操作が行われており、事実上死に体であった。2000年9月に側近による国会議員への買収工作が明るみに出て人気が急落、2000年11月来日中に突然大統領辞任を表明、辞表をペルーにFAX送信し、そのまま日本に滞在を続けた。事実上の亡命である。
ペルー政府は辞任を受理せず(当たり前だ。どこの世界にFAXで送信された大統領の辞表を受理する国があるというのか)、大統領を罷免。殺人罪、人道犯罪の罪、権力乱用罪など様々な罪状で、日本政府に身柄の引き渡しを求めたが、日本政府は彼が日本国籍を有していることを理由に、引き渡しを拒否した。
フジモリ氏は日本国籍とペルー国籍の二重国籍者である。国籍法第十六条2の規定によれば、二重国籍を有するものが自己の志望で外国の公務員になった場合には日本国籍を剥奪することが出来るが、日本政府はその権利を行使していない。そして、日本国籍を有する30歳以上の人物には参議院議員選挙の被選挙権が与えられるので、法律上は彼は確かに参議院議員選挙に立候補することが出来る。
しかし、事実上の独裁者として一国の大統領を長年勤め、現在は祖国から国際手配されている人物が果たして日本の国会議員になることが許されるのだろうか? もちろん、彼の経験や行動力、人脈など日本政治にとって有利に働く面もあるかもしれない。彼のような強力なリーダーシップは、安倍首相がのどから手が出るぐらい欲しい能力だろう。しかし、少なくともペルーとの関係は冷え込まざるを得ないし、国際手配犯を国会議員という要職に就ける事への諸外国からの反発もあるだろう。
個人的にはそういったリスクを払ってまで彼に国会議員をやってもらう理由はない。国民新党も彼の知名度が欲しいだけで、彼の政治手腕に期待しているかどうか怪しいものだ。知名度の観点だけでタレント候補を擁立する政党には(そして彼らを当選させる有権者にも)毎度呆れるばかりだが、知名度の観点だけで他国の元大統領で国際手配者を引っ張り出す国民新党には驚いた。最低限厳守すべき一線を越えている気がしてならない。
フジモリ氏にしても、自分の牙城(最近はそれも怪しいが)のペルーならともかく、支持者もいない勝手も分からない日本に連れてこられても困るだろう。どうせフジモリ氏からFAXでお断りの返事が来るに決まってるって。