落下するエレベータから生還する(かもしれない)方法

Pan Pacific Singapore (sanchom)


最近エレベータの事故が相次いでいる。エレベータに乗っていても、もしかしたら故障してエレベータが落ちるかも知れないななんて思っていることがよくある。仮にエレベータを支えるワイヤが切れて、エレベータが落下した場合、助かる方法はあるのだろうか。

教えて!goo エレベーターの落下時の人間等を見てみると、エレベータの落下時の状態としては次の3つのどれかだと考える人が多いようだ。

  1. 床に張り付く
  2. 天井に張り付く
  3. 空中に浮かぶ

このうち、天井に張り付くんじゃないかと考えた人は中学校の理科から復習する必要があるだろう無重力状態になって空中を浮かぶと考えた人は、空気抵抗やケーブルとの摩擦を考慮に入れるのを忘れている。地下無重力実験センター(JAMIC)では総延長710mの落下型実験施設で10秒間の無重量時間を生成することが出来るが、外側のカプセル内が真空となった二重カプセル構造になったガススラスタ方式の空気抗力補償機能を有している。エレベータはそのような補償機能を有さないため、エレベータ落下時内部にいる人は通常と同様に床に張り付くこととなるHIRAX.NETにおいてエレベータ落下時の計算結果が示されている。摩擦を考慮に入れると落下当初は一瞬からだが軽くなった感じがするが、その後はほぼ1G(通常)の重力加速度を感じるはずだ。

Wikipediaによれば、エレベータのワイヤは定員の10倍以上の重さに耐えられる強度を有することが義務づけられており、3本以上あるワイヤが総て切断されることは稀である。仮に切断されたとしても、非常用停止装置が導入されており、安全に停止するようになっている。また、最終的に落下したとしてもその衝撃を吸収する緩衝器(バネあるいは油圧ダンパー)があり、地面にたたきつけられることはないとされている。

ところが、2005年2月に福岡市で起きたエレベータ落下事故では、エレベータ改修工事中にワイヤを外していた際にエレベータを支えるチェーンが外れ、エレベータが屋上から落下した。通常は設定以上の速度が出ると非常用停止装置によりガイドレールをつかんで落下を停止することになっているが、このときには安全装置が働かなかった。また、昇降路の底には緩衝器があったが、衝撃を吸収しきれず、作業員が死傷することとなった(1人死亡、1人骨折)。一方、2000年にはエンパイア・ステート・ビルにおいて女性2人を乗せたエレベータが44階から突然落下を始めた。このときには安全装置が働き40階分120m落下した地上4階でエレベータは停止、2人は特に大きなけがもなく無事だった。ロープの重さを解消するコンペンセーティング・ロープの切断が原因*1だったようだが、いくら稀とはいえワイヤが切断される事故は発生しうるし、安全装置がはたらかないこともあるわけだ。

万が一、エレベータが落下し始めた時、少しでも生還率を上げるにはどうしたらよいだろう。wikiHowにそのものずばり"How to Survive in a Plummeting Elevator"というエントリがあるので、その心構えを紹介しよう。もしかしたら役に立つことがあるかも知れない。

ステップ

  1. エレベータの中心付近で寝そべる。
  2. 体をエレベータの床となるべく水平になるようにする。
  3. 衝撃で天井から部品が落ちてくる可能性があるので、頭と顔を覆って衝撃に備える。

Tips

  • 油圧式のエレベータはワイヤ式のエレベータよりも比較的落下事故が発生しやすいと考えられる。油圧式のエレベータは、車のジャッキアップと同様に底から巨大なピストンで押上げられる。このピストンが腐食はエレベータが落下する原因となりうる。ただし油圧式のエレベータの高さはその構造上約70フィート(21m)までに限定されるため、落下したとしても死ぬ事は無いと思われる。
  • エレベータには複数の安全装置が付けられている。非常用停止装置で止まらなかったとしても、緩衝器は衝突時の衝撃を和らげ、あなたの生存確率を上昇させてくれるだろう。パニックにならず、適切な姿勢を取って衝撃に備えることが肝要である。

注意

エレベータが底に衝突する瞬間にジャンプしようとするのは馬鹿げた考えである*2。たとえ、衝突の瞬間、数10cm空中に浮いていたとしてもあなた自身は依然として高速で落下しており(慣性の法則)、一瞬後にエレベータの床面にその速度を保ったまま衝突することとなる。衝突する時間がちょっとずれるだけで衝撃を吸収するような効果は全くないし、不安定な姿勢を取ることは得策ではない。

もし、あなたの乗っているエレベータが突然落下を始めたら、上記のステップを思い出し冷静に対処することができれば、死なずにすむかも知れない。前述の福岡市のエレベータ落下事故において中にいた2人の生死を分けたのは、衝突時の姿勢が大きく影響したと考えられる。くれぐれもジャンプの準備をしたりしないように。

*1:詳しくははるかの毎日!昇り降り!!: 摩天楼でフリーフォール エレベーターが落下参照

*2:エレベータの抵抗を考えなければジャンプ自体不可能だが、抵抗により1G程度の加速度がかかる事を想定すると、ジャンプは可能であると考えられる。