新型お召し列車E655系登場

本願寺唐門 (Hyogushi)


朝日新聞が伝えたところによれば、JR東日本が所有する皇室専用のお召し列車の新型車両がほぼ完成し、メーカーからJRに引き渡されたそうだ。濃い茶色の車体に金色のラインが3本走った車体は一種独特な威圧感を感じさせる。1両が皇室専用(御料車)で、残り5両が随行員用(供奉車)で一般向け豪華電車にも使われるという。秋以降の運用ではお召し列車に乗ることも出来るかも知れない。

Wikipediaによればお召し列車の運行には次のような三原則があるという。

  1. 他の列車と並んで走ってはならない
  2. 追い抜かれてはならない
  3. 立体交差の際、上を他の列車が走ってはならない
お召し列車 - Wikipedia

確かに天皇の乗る車両を抜かしたり見下ろしたりしてはならない気がする。これでも大日本帝国時代よりはずいぶん緩和されているのは確かだが、現代においてもお召し列車の運行に際しては、沿線や駅の警備の他に下記のような細心の注意が払われていることが多いと言う。

  • 車両が故障したときの代替として予備車を用意する。
  • 通常の車両を使用する場合でも塗装を塗り直した上でフラットを無くすために車輪の削正を施行し、窓を防弾ガラスにする(新規製造時にVIPの乗車を考慮し、あらかじめ全てまたは一部の窓を防弾ガラス仕様にしておく例もある)。また、警察用無線の設置スペースが確保されている。
  • 本列車の運行の直前に、特別の回送列車(通常は単行機関車)を走らせ、線路上に問題がないことを確認する(通称「露払い」)。
  • お召し列車担当の運転士は、運転区間を管轄する車両基地内で技術・勤務態度を考慮して選ばれる。特に、ショックの無い発車や停止、数秒の狂いも無い運転、数センチのズレも許容されない停止位置など、通常の列車に比べて非常に緻密な運行が要求されるため、運転技術が特に優秀な運転士が選任されている。
お召し列車 - Wikipedia

ずいぶん運行にコストがかかりそうな感じだが、車両の製造代だけ考えても、宮内庁が支払うお召し列車の運行代金でペイするとは思えないので、JRの持ち出しになるのだろう。供奉車を一般向けにも開放して製造コストと維持費を捻出しないと営利企業としては申し開きが立たない面もあるに違いない。

クマ川急行に掲載された写真によれば、先頭車の形式称号はクモロE654-101、御料車は白いカバーが掛かっているので判別できないがE655系だという。

形式称号においてクは運転席(クルールーム)のある制御車、モは動力装置(モーター)のある電動車、サが両方付いていない付随車を表す。また、イ、ロ、ハは車両のグレードを表し、昔はイが一等車、ロが二等車、ハが三等車を示したが、最近ではイがなくなって、ロがグリーン車、ハが普通車を示す。つまり、クモロE654-101は運転席と動力装置が付いたグリーン車車両だということだ。ちなみに、EはJR東日本を表し、654の一桁目は電気方式を示し6は交直流両用、二桁目は種別を示し5は特急形、3桁目は開発順を示す。E654の次にE655が開発されたということだ。101は番台および製造順を表す。

となると、御料車はサロE655-101かと思ったが、Rail-G Stationによれば、それは2号車の型番であり、御料車はE655-1となるようだ。番台も製造順もなく、単なる1。大統領専用機のエアフォースワンを彷彿とさせる。付随車にも関わらず40.5tもあるのは装甲によるものだろう。ちなみに現在山手線を走っているE231系電車の付随車は25tしかない。グリーン車編成でも36.1tだ。

今上天皇の意向もあり、最近ではお召し列車が運行されることも少なくなってきたというが、せっかく新造したのだし、あちらこちらへ走らせてほしいものだ。秋以降に予定されている一般への開放も人気を呼びそうだ。もっともお召し列車というと飛行機が怖くて列車でばかり移動している北の将軍様を連想するので、最近あまりいい印象がないのが玉に瑕だが。