赤城農相、お前もか

「ブルータス、お前もか」はジュリアス・シーザーが紀元前44年、自らの息子でもあったブルータスに暗殺された時の台詞だが、次から次へと閣僚が不祥事を起こす安倍首相の心中も同様であるだろう。

ナントカ還元水」で自殺した松岡前農相の後任として6月に就任したばかりの赤城徳彦農相だが、就任1月余にして早速、事務所としての活動実態がない実家を「主たる事務所」として選管に届け、2003年からの3年間に約1227万円もの経常経費を計上する不透明な会計処理をしていることが分かった。実家には家賃がかからないはずなのに、3年間で526万円もの事務所費が計上されているのは腑に落ちない。

実家に住む母親の話によれば、「家賃や光熱費などは受け取っていなかった。私設秘書や事務員は選挙前には来るが、常駐はしていない」と話しており、活動実態がないことは明らかだ。赤城徳彦後援会は2005年までの10年間に9046万円の経常経費を計上しているが、この経費の使い道も怪しいものだ。

赤城農相は、この経常経費について、水戸市にある自民党茨城県第1選挙区支部事務所を使った後援会活動の経費も合算し、報告していると釈明した。実家は「祖父の代から後援会活動の中核の場所で、会合を開いている」と強調。事務所費については、「電話代や切手代、事務機器のリース代を計上している」とした。

一方、赤城農相の別の政治団体「徳政会」も、東京都世田谷区にある農相の妻の実家に事務所を置きながら、1996〜2005年に計1496万円の経常経費を計上していたことが分かった。代表者は、「父から代表者を引き継ぎ、名前を貸したが、目立った活動はしていない」と説明しており、こちらも活動実態がないようだ。これに対し赤城農相は、「架空計上はない」と強調したが、「具体的な内訳は分からない」と述べ詳細な説明を回避した。

さて、赤城農相の説明と、両親や後援会関係者の証言に齟齬が出ていることにあわてたのか、8日に関係者が揃って前言を翻し、活動実態があったと証言し始めた。まず赤城農相の両親は「(実家は)今でも地元の活動の拠点となっている」などと先の発言を事実上撤回し、釈明する文書を配布した。文書では「以前は秘書が自宅に常駐していたが、(今は)事務を水戸事務所で行わせていることから、事務を行う『事務所』としての活動が以前ほど活発ではないという趣旨でお話しした」としているが、どう聞いてもそんなニュアンス、文脈の発言ではないように思える。

また、「代表者になっていることは報道機関からの問い合わせで知った。(赤城氏に)釈明を求めたい」と話していた後援会代表者も8日夕、「宗徳氏の時から代表をやっているから、赤城農相の代になってもそのまま継続してやっている。自然発生的にそうなった」と説明し、発言の修正を行った。赤城農相の実家についても、前日には「(実家を)事務所として使われてはいない」と話していたにも関わらず、「事務所としての実態があったと認識している」と述べ、これまでの発言を翻した

赤城農相は10日閣議後の記者会見で、同後援会が2000年まで茨城県下妻市の事務所で活動していた経費も合算して報告していたと釈明、「かかった経費を積み上げた数字だ」と改めて架空計上を否定した。しかし、内訳などの詳しい説明は一切せず、領収書などの客観的な証拠の提出も行わないとあっては、不正処理が行われていたのではないかという疑念を払拭することは出来ないだろう。また、妻の実家を主たる事務所として登録し10年間で1496万円の経費を計上していた「徳政会」に関しては、「最近は細々と活動しており、代表者や会計責任者も高齢になった」と説明し、今回の問題を契機に解散手続きを取ったという。

家族や関係者が揃って前言を翻したわけだが、疑惑は払拭されるどころか深まったと感じた人の方が多いだろう。フォローの仕方が小学生のように稚拙で、どう見ても関係者間で口裏を合わせて否定しているようにしか見えない。不透明な会計処理で現役大臣が自殺すると言う後を受けての農相任命だったのに、そのわずか1ヶ月後に参院選挙前という最悪のタイミングで、前任者と同様の不正会計処理疑惑が起こるとは、安倍総理もつくづく人を見る目がないようだ。自民党は選挙に勝つ気がないのか?と疑わざるを得ない。

さて、赤城徳彦ホームページによれば、赤城農相の座右の銘は「政治家は一本のろうそくたれ」とのことだ。意味は、政治家は自分の身を燃やし、身を削りながら世のすみずみまでを照らし出し、よりよき社会を造るべく働くものであるとのことだそうだが、このままいけば参院選における自民党惨敗と言う爆弾に火を付けるだけに終わりそうだ。