植物の光合成を3割アップする方法

産経新聞によれば、日本大学生物資源科学部の奥忠武教授を中心とする研究グループが、植物の光合成の能力を3割増強し、植物を大きく育てられる手法の開発に成功したという(リリース文論文)。植物を効率よく栽培できるため、バイオマスエネルギーや食物の増産効果、二酸化炭素の吸収量拡大による地球温暖化の防止効果も期待される。

光合成には光化学反応と呼ばれる明反応と、カルビン-ベンソン回路と呼ばれる暗反応に分けられる。明反応は光エネルギーを吸収して酸素、還元物質NADPH、アデノシン三リン酸(ATP)を生成する反応であり、暗反応は還元物質NADPHとATP、二酸化炭素からフルクトース6-リン酸、最終的にはデンプンを合成する反応である。簡単に言えば、明反応で酸素が生成され、暗反応で二酸化炭素が固定化されるわけだ。

  • 明反応
    • 12 H2O + 12 NADP+ → 6 O2 + 12 NADPH + 72 H+in
    • 72 H+in + 24 ADP + 24 Pi → 72 H+out + 24 ATP
  • 暗反応
    • 6 CO2 + 12 NADPH + 18 ATP → C6H12O6 + 12 NADP+ + 18 ADP + 18 Pi

今まで光合成の研究は暗反応を中心に行われていたが、明反応は分子が巨大なこともあってあまり研究が行われてこなかったという。今回、奥教授らは初めて明反応の強化に成功し、それに伴って暗反応も強化された。

現在の植物は光化学反応において電子伝導体プラストシアニン(PCy)を利用するが、研究グループは下等植物のすしのりが持つ電子伝導体シトクロム(Cyt)をシロイヌナズナに導入、電子伝導体の種類を2つにした。これにより、背丈、重量、葉の面積、根の長さなどが3割程度増え、光合成の明反応能力を示すATPの量も約2倍になったという。

これにより、通常の植物より大きく、光合成能力も強い植物を量産する事が出来るようになるかも知れない。単純にはバイオマス燃料の増産、植物の増産などが期待されるし、二酸化炭素の固定化能力も魅力的だ。既存の生態系に与える影響に関する研究はまだこれからだが、エネルギー問題、食糧問題、地球温暖化問題をまとめて解決できるキーテクノロジとなるかも知れない。

地球に腐海が誕生する最初の一歩かも知れないが。