500GBの容量をもつホログラフィックディスク

Ars Technicaが"Microholography milks 500GB out of DVD-sized discs"として報じたところによれば、ベルリン工科大学の光学研究科の研究チームは、DVDサイズのディスクに500GBのデータを蓄積する技術を開発したと発表した。Microholasプロジェクトの研究チームはDr. Susanna Orlicによって率いられており、彼らは2010年までにストレージの容量を倍の1TBに引き上げることを目指している。

このプロジェクトは記録プロセスにおいてナノ構造にデータを記録するマイクロホログラフィック記録技術を実現することを目的としている。マルチレイヤのストレージとホログラフィック多重化により、マイクロホログラフィ(microholography)は、3次元にデータを蓄積することを可能にする。この技術は、CDやDVDなど従来のディスクが2次元に凹凸を刻む代わりに、2種のレーザー光によりホログラフ的に誘導される微小格子構造を用いる。言い換えれば、既存のCDのような凹凸で記録する代わりに、この新たな技術はディスク全域にわたりデータの読み書きに利用できる3次元のホログラフィックグリッドを生成するのだ。

マルチレイヤでデータを蓄積するために、レーザー光は感光性樹脂層内部の様々な深度にフォーカスされる。これはつまり、レーザー光は3次元のホログラフィックグリッドの様々な高度にデータを書き込むために実際上げ下げされる事を示している。

あなたが想像するように、このプロジェクトは将来の見通しについて楽観的である。研究チームはディスクは大量生産によって安価に製造できると予想している。ただし、コストの大部分を占める記録デバイスがどれだけの値段になるかについての言及はなかった。

ブルーレイディスクは現在2層記録で50GB、HD-DVDは同様に30GBの容量を持つが、双方ともより複数のレイヤを重ねることでより多くの容量を実現できる見込みだ。2010年までにブルーレイで100GB、HD-DVDで60GBの容量がPCにおける記録にできるようになるだろう。

マイクロホログラフィックディスク(MHD: Microholographic disc)は透明でCDやDVDと同じ大きさだが、Microholasプロジェクトによって作成されたこのディスクは5つの異なる周波数を有する10層のレイヤを有する。このプロトタイプディスクは記録可能で、50Mbpsのデータレートを誇るが、研究チームは2010年までに1TBのデータ容量と200Mbpsのデータレートを実現する改良型の開発を目指している。

ホログラフィックディスクと言えば、オプトウェアによるホログラフィック・バーサタイル・ディスク(HVD: Holographic Versatile Disc)が有名で、1TBの容量と1Gbpsのデータレートを持つとされており、現在HVD Allianceにおいて標準化が進められている。また、2007年2月には、InPhase Technologiesが第1世代のホログラフィックストレージとして容量300GB、160MbpsのTapestry HDS-300Rを発売している上、同社は2008年に容量800GBの第二世代、2010年までに1.6TBのホログラフィックディスクを発売する計画を明らかにしている。これは10,000時間の平均故障間隔、50年の耐用年数をもつホログラフィックストレージデバイスで、デバイス本体が18,000ドル、ホログラフィックディスクが1枚180ドルである。

次の図に今後登場が予定されている主な光ディスクの容量とデータレートを示す。縦軸横軸とも対数スケールとなっていることに注意すること。


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MHDが他の対抗技術に対してどれだけの優位性を持っているのかは不明だが(スペック上の数値は率直に言えばHVDに見劣りする)、ハードディスクの肥大化にバックアップメディアの容量が追いついていない現状を打破するテクノロジの登場を期待して待ちたい。