歯のリサイクル

LM-72007-07-20


歯の治療の一環で、健康な歯を抜かないといけない場合がある。実にもったいない。この歯を取っておけば将来再利用できないだろうか。

ティースバンクは矯正治療で抜かれる小臼歯や親知らず,はえるスペースのない親知らずなど、大きな虫歯や歯槽膿漏にかかっていない比較的健康な歯を何らかの治療の一環で抜歯する場合、将来の歯の移植を想定して、冷凍保存しておくシステムである。あくまで、自分の歯を将来自分に移植することが前提だ。また、移植に適合しない不健康な歯や抜かれて時間が経った死んだ歯は保存する意味がない。

ティースバンクに自分の歯を冷凍保存しておけば、将来虫歯や事故などで歯を失うことになったとき自分の歯を移植することが出来る。ティースバンクは、磁場を使ったプログラムフリージングを行い、保存液とともに-150℃で歯を冷凍する。プログラムフリージングでは、10〜80mAの磁場を連続的に発生させ0.5〜1.0℃/minの冷却速度で冷凍してゆく。このプロセスにより、歯根膜細胞の生存率を飛躍的に高めることが出来るのだ。

適切に冷凍保存された歯では歯根膜細胞が生存しているので、再移植時に歯が生着する確率が高まる(おおよそ7割〜8割程度)。nikkei BPnetの記事によれば、入れ歯やインプラントと比較して、自分の歯を用いた移植歯が優れている点は、歯根膜が付いているため"噛みごたえ"が得られる点だという。歯根膜の組織からは、神経や血管が再生するので、普通の歯と同じような噛みごたえが約7割は戻る、と言われているという。また、インプラントは骨の一部と癒着するため、トラブル発生時に歯を除去しにくいという面があるが、移植歯なら再度抜歯をすることも可能だ。

有限会社スリーブラケッツは上記のプログラムフリージング技術を開発した広島大学で事業化されたベンチャーで、ティースバンク事業を運営している。歯の保存にかかる費用は、血液検査30,000円+歯の冷凍保存費用50,000円(20年/本) 、歯の検査費用40,000円/本、輸送費(広島県外33,500円/広島県内5,000円)となっており、1本を20年保存してもらうのに125,000〜153,500円かかることになる(追加料金40,000円/本で保存期間20年延長可)。1年未満の短期保存だと血液検査も要らず5万円弱に抑えることも可能だ。

一方、ティースバンクに保管されている歯を解凍して移植する時にも10万円ほどの費用が発生する。その際、親知らずは、第1、第2大臼歯の部分に移植できる。また歯列矯正のために抜歯される小臼歯は、下顎の前歯以外なら、歯の形を整えることでどこの部分にも再利用が可能だという。だいたい移植後2〜3ヶ月ほどで全く違和感なく噛めるようになるそうだ。

歯列矯正や親知らずなど、健康な歯を抜かざるを得ない場合、将来の保険として、自分の歯を冷凍保存しておくこのシステムは一考の価値があるだろう。美味しくものが食べられる歯を健康に保つことは人生を豊かにする上で重要な意味を持つ。長い目で見れば決して高くない買い物では無いだろうか。