空自次期戦闘機(F-X)の選定は先送りへ
既報のとおり、防衛省は空自次期戦闘機(F-X)の選定時期を先送りすることに決定した。本命と見られているF-22Aの輸出許可が早期に下りる見込みがなくなったためだ。
米下院歳出委員会は25日、F22の禁輸措置の継続を決定、日本は早くても2008会計年度が終わる来年9月末までF22の情報を得ることができなくなった。米下院歳出委員会の決定は、日本を通じてF22の防衛機密が中国などの第三国に流出することを懸念したものだ。
禁止条項はF22について「この予算はいかなる外国政府への売却のためにも支出されてはならない」と規定している。
同委員会のマーサ国防小委員長はこの日、審議終了後議会内で記者団に対し「(F22は)現時点で世界で最も高性能な戦闘機であり、我々は(その輸出には)非常に神経質になっている。企業は実現したいかも知れないが、我々はそうはしない」と語った。
http://www.asahi.com/international/update/0726/TKY200707260044.html
日本は禁輸措置を解除するよう米国議会に働きかけを進めてきたが、一方でイージス艦機密情報のWinny情報流出などお粗末な事例が後を絶たず、日本の秘密保持体制に関する米国の懸念を払拭できなかったといえる。仮にF22が日本に輸出されれば、中国はあらゆる手を尽くして最新ステルス戦闘機の機密情報の獲得に乗り出すだろう。中国が何もしなくても勝手にWinny経由で防衛機密が漏れ出す防衛省を米国議会が信用できなかったとしても無理もない。日本には機密情報を扱う能力がないと判断されたのだ。
防衛省は28日、防衛相の下に各自衛隊の統合部隊として、来年4月にも「情報保全隊本部」を設置する方針を固めた。同省で相次いでいる機密情報漏洩に対する米国側の懸念を払拭することが狙いで、F22を日本に輸出しても大丈夫だとアピールすることが主眼だ。防衛相直轄の情報保全隊本部は秘密保護をミッションとする。さらに防衛相の下に事務次官を委員長とするカウンターインテリジェンス(対諜報)委員会が設置されるようだ。米国にしてみれば、いままでそういう組織すら無かったのかという感じだろうが、とりあえず形だけでも整えるということだろう。
無論、形だけでは意味が無く、実際に機密情報が外部に漏れ出さないような仕組みを作り、きちんと機能させなければならない。Winnyのような低レベルな漏洩だけではなく、女性スパイによるハニートラップ(honeytrap)などへの対策も含まれる。最近の事案では、2004年に在上海日本総領事館の電信官が遺書を遺して自殺した事件や、2006年の海上自衛隊の一等海曹(発覚後自殺)が内部情報を持ち出したうえ中国に無断渡航していた事件が挙げられるが、両者とも一人の中国人女性と緊密な関係であったことが明らかになっており、ハニートラップにはめられた可能性が指摘されている。ちなみにハニートラップは欧米ではすでに廃れてきているとされており、日本における諜報活動で未だに通用するのは、日本におけるカウンターインテリジェンスが未熟な証左であろう。
情報保全隊本部の設置は、イージス艦中枢情報流出事件がF-X選定問題に波及し、日米同盟に実害を生じたことの教訓によるものだが、いずれにせよカウンターインテリジェンス体制の整備は日本の国防にとって急務である。まあ、選挙前に次々と大臣が失言をするようでは先は長そうだが。