地方公務員の給料は異様に高い

時事通信が伝えたところによると、人事院が今年度初めて実施する国家公務員中途採用者選考試験(再チャレンジ試験)について、採用枠152人に対し25,075人から受験申込みがあったという。競争率は実に165倍。よっぽど優秀でないと採用される見込みはない。

なぜこんなに公務員に人気が集まるのか釈然としなかったが、夕刊フジBLOGの「これが地方公務員の高給実態だ!」を読んでその理由がわかった気がした。下の表は総務省調査「地方公共団体の技能労務職員等の平均給与月額等について」による、電話交換手、守衛、自動車運転手、用務員の都道府県ごとの地方公務員の平均給与と民間企業の平均給与をランキング表示したものである。民間企業の順位を青で示し、それよりも高いものを赤、それよりも低いものを緑で示した。また平均給与の千の位以下、平均年齢の小数点以下が開示されていないものは切り捨てている。

【電話交換手】【守衛】【自動車運転手】【用務員】
都道府県平均月給年齢対民間 都道府県平均月給年齢対民間 都道府県平均月給年齢対民間 都道府県平均月給年齢対民間
1埼玉473,90056.7222%1京都540,00050.3211%1愛知521,30052.9182%1神奈川457,30054.9200%
2神奈川453,80050.7213%2大阪496,60049.7194%2東京508,50051.4178%2京都455,50054.3199%
3栃木449,20054.8210%3山梨488,00055.3190%3大阪485,80052.1170%3兵庫427,00050.2187%
4石川436,50055204%4埼玉477,50058.8186%4京都472,80050.7165%4大分417,20052.1183%
5福岡431,60055.7202%5福岡477,00050.3186%5宮城446,60054.4156%5広島413,30049.9181%
6青森430,00055.3201%6山口447,40046.1174%6埼玉441,00049.3154%6埼玉413,00053.1181%
7京都428,90045.8201%7大分446,50046.7174%7大分439,30053.9153%7石川411,40056.1180%
8兵庫423,40050.5198%8東京445,40046.2174%8静岡439,20044.2153%8奈良409,40050.4179%
9富山421,80057198%9鳥取443,60048.3173%9岐阜436,20055.4152%9長崎406,40047.3178%
10福島416,30048.5195%10愛媛433,40050.6169%10千葉435,90053.8152%10山形405,70046.3178%
11東京415,80046.8195%11新潟430,00044.3168%11福井431,60047.2151%11愛知405,40052177%
12宮城410,00051192%12鹿児島427,10044.4167%12徳島431,20049.7151%12岡山405,20050.4177%
13佐賀404,80050.3190%13北海道425,70049.2166%13福島427,70048.9149%13静岡397,20048.5174%
14熊本401,70049.4188%14長野424,30049.6165%14茨城427,70050.2149%14東京396,60048.4174%
15大分398,40050.9187%15宮城422,40051165%15和歌山427,70049.5149%15福岡387,10051.3169%
16山口397,40049.1186%16茨城418,20044.7163%16石川426,20049.6149%16鹿児島385,60043.7169%
17大阪393,00044.3184%17石川417,00050.9163%17兵庫423,70047.4148%17島根385,30049.7169%
18茨城391,50056.6183%18富山416,80052.5163%18神奈川420,00040.9147%18三重382,30048.1167%
19長崎387,20044.1181%19福島416,50055162%19福岡416,70049.6146%19富山381,40050.6167%
20和歌山386,60049.1181%20千葉414,20049.2162%20長崎407,90046.1143%20佐賀380,00048.7166%
21新潟383,90051.1180%21兵庫413,50043.3161%21山口406,90046.4142%21大阪380,00049166%
22千葉382,10050.8179%22奈良407,20043159%22富山406,30047.9142%22新潟380,00047.5166%
23岡山380,00048.1178%23佐賀400,00046.1156%23鹿児島405,60046.2142%23宮崎378,60048.9166%
24岩手376,80045.4176%24宮崎392,50053.7153%24長野401,80048.3140%24茨城376,90043.4165%
25鹿児島372,20043.9174%25岡山392,30040.6153%25三重399,10048.8139%25福島376,70047.9165%
26滋賀371,40045.9174%26島根385,70044.7150%26滋賀397,80054.2139%26山梨376,50048.7165%
27長野369,30047.2173%27福井383,80042.6150%27岡山396,70046.9139%27滋賀373,70051.3164%
28香川369,10048.8173%28静岡381,70041.4149%28香川396,70046.7139%28長野373,40047.3163%
29岐阜366,60046.1172%29秋田381,60047.8149%29熊本393,90049138%29沖縄372,20050.2163%
30沖縄365,30047.4171%30長崎381,40041.4149%30秋田391,60048.8137%30香川371,60048.1163%
31愛媛361,20045.4169%31和歌山378,70046.5148%31佐賀390,00052.8136%31高知367,30052.8161%
32島根359,80047.6169%32沖縄377,60044.5147%32新潟389,70046.6136%32和歌山365,40049.4160%
33北海道355,90046.6167%33愛知376,70040.8147%33栃木387,40046.1135%33千葉364,60050.9160%
34高知352,70051.6165%34岩手373,20053.5146%34鳥取382,80045.5134%34山口362,40045.3159%
35山形350,00041.5164%35熊本373,00044.9145%35宮崎381,20045.8133%35愛媛358,70046157%
36福井334,90040157%36香川369,00042.8144%36島根376,30046.1131%36宮城357,60046.8157%
37愛知282,40034.8132%37徳島336,70035.9131%37山梨375,60042.8131%37熊本355,80043.9156%
38民間平均213,50041.4100%38青森333,50038.2130%38北海道374,70048.4131%38北海道355,50048156%
39山形309,50035.3121%39青森371,60046.6130%39栃木354,90044.7155%
40民間平均256,40058.2100%40愛媛369,60045129%40群馬354,10049.2155%
41沖縄367,30044.6128%41福井351,90045154%
42岩手363,00047.1127%42岩手348,80045.7153%
43高知360,00050.5126%43徳島341,80042150%
44山形344,30039.6120%44青森340,00044.6149%
45群馬335,80041.5117%45岐阜339,40051.8149%
46民間平均286,20052.5100%46鳥取329,90041.1144%
47広島275,80055.496%47秋田328,50043.9144%
48民間平均228,40053.7100%
公務員平均391,497 48.8 183%公務員平均411,672 47 161%公務員平均406,707 48.4 142%公務員平均379,968 48.5 166%
38民間平均213,50041.4100% 40民間平均256,40058.2100% 46民間平均286,20052.5100% 48民間平均228,40053.7100%

なんと民間企業よりも低い給与だったのは、広島の自動車運転手のみで、ほかは全て民間企業を凌駕する高給を得ていることがわかる。表には併せて対民間企業パーセンテージを示しているが、200%を超えるのが電話交換手(埼玉)の473,900円、守衛(京都)の540,000円、用務員(神奈川)の457,300円など。150%を超えるのは118、全体の7割にも上っている。ただし、それぞれの担当部署の言い分によれば、平均年齢の差、事業規模の差、雇用形態の差、時間外手当の差など、直接的な比較が必ずしも妥当でない場合もあるという。

筆者の認識不足であるかもしれないが、電話交換手、守衛、自動車運転手、用務員という職業は、あまり高度な専門技能が求められる職業ではないような気がする。一般的なイメージではやはり民間企業の平均値ぐらいの給与が妥当なのではないだろうか。そもそも電話交換手ってこのデジタル時代に何をやっているのだろう。まさか単なる電話番に40万を超える月給を払っているのだろうか。月給50万円の守衛は、筋骨隆々の格闘家か元SAS隊員だったりするのだろうか。

こうした業務は全て民間に委託してしまえば、税金の無駄遣いをずいぶん減らせるだろう。国民の税金で給与が支払われている公務員は、もっと高度な専門性を要求される業務を担い、行政サービスを的確に運営し、改善を進めることに労力を注いでほしい。そうした人材を雇い、育成することにこそ税金は使われるべきだろう。

総務省は今年4月に地方公共団体における民間委託の推進等に関する研究会<報告書>をとりまとめており、民間委託等を、地域において多様な主体が公共サービスの提供を担っていくための重要な手法として位置付けている。また、公共部門の生産性向上を実現するとともに、真に行政として対応しなければならない政策・課題等に重点的に対応した簡素で効率的な行政を実現する手法としても有用であると結論づけており、今後民間委託をより活用できる体制作りが進められると見られる*1

もちろん民間に比べ高い給料を払うだけの価値・理由がある場合もある。相当程度の裁量を行使する必要があったり、地方公共団体の担う統治機能に深く関わる業務など民間委託がふさわしくない場合もあるだろう。それならそれで、給料に見合う価値があることを説明する説明責任を果たさなくてはならない。巨額の赤字に苦しむ地方公共団体ならなおさらだ。

2008年1月8日追記

id:pekoraikoiu氏より本エントリが安易な公務員叩きを助長しかねないと憂慮するコメントを頂いた。地方公務員の人件費に関しては、大都市圏に比べて脆弱な地方経済をどうやって維持・発展させていくかという課題と密接に関連することから、単純にその多寡を扱うことは不適切であるというものだ。本エントリにおいてそうした視点が欠けていたことは事実であり、問題の一面のみを取り上げた本エントリが安易な公務員叩きを助長する可能性があるという氏の憂慮は極めて妥当なものである。何事にも多面的な分析が不可欠であるということを改めて認識させていただいた次第だ。

以下に該コメントを掲載させていただく(掲載に当たり一部整形を行っている)。本問題を考えるときの一助としてほしい。

ある方が、その記事を裏打ちするかのような提言を行っていて

原田 泰氏
大和総研 チーフエコノミスト

このタイトルにはこうあります。
「公務員の相対賃金が高ければ、ビジネスに人材が集まらない」

よろしければ、そのままリンク先の記事の方を先に読んでみてください。まずそれを読まれたあと以下を読んでください。

そのエコノミストの方の反論、というより論破を、一人の職無しニート、を自称する方がしてまして

中を読めばわかりますが、もし地方公務員の給与を下げたら、人材は民間に行かず、むしろそのままでは地方を枯死させることになりかねないと持論を述べています。

こちらも地方に住んでいる身として言わせてもらえば、地方の公務員の安定や高給に何も感じないわけではありませんが、それ以上に人材、特に良質の人材が続出して東京に出ているため、公務員が高給だなんだと言っていられるほど生やさしい事態になっていないのです。簡単に言えば、今の地方は職域環境は言うに及ばず、良質な人材そのものが枯渇しつつあるため、タダでさえ沈滞している地方経済は、もし公務員を失えば、それはそのまま需要も人材も失うという環境にここ数年おかれてしまっているのです。彼らは地方の民間になんて来ませんし、またそれをどう受け皿を作るのかのノウハウも地方はもたないないまま、東京に良質な人材を奪われ、ただ年老い、衰退しているのが現状なのです。
地方の特に市民やメディアは危機感を募らせていますが、もはや地方には人材も、資金も枯渇しているため、一部の曲芸的な政策でなんとか凌いでいる自治体の例を除けば、大都市圏から遠い地域ほど、これらの傾向がますます強くなっているのが現状です。

管理人がそれらデータを紹介すること自体は多分報道的な意義を持っているのかも知れませんが、そのデータを紹介すること、もっといえばそのデータが、この Blogのランキングの中でトップに近いアクセス数を占めていることで、それを読んで鵜呑みにした人が公務員叩きをさらに増長させる、言うなれば、最近起きた患者殺しの医師報道で、まじめにしている医者ほど追いつめられ、結果西日本で医療崩壊を招いた毎日新聞と同じことをしている危険性があって、正直これはまずいと思ったのです。

過去の記事を読めばわかりますが、この方に限らず、昔は高給取りと権威の代名詞だった医師が、良心的な人であればあるほど、徹底的に報道と一般人に追いつめられている現状を嘆く、あるいはどうにかできないかと考えている流れが見えてくると思います。
一例とあげればこの方のように。

アウトソーシングすればいいではないかと言いますが、現状そんなことをすれば、まともなノウハウが民間にはない地方の現状で考えられることは二つ。一つはろくなノウハウを持ってない地方の支配的な企業、ないしは組織が、自治体の議員や官僚と手を結んで、今までよりはるかに落ちるサービスを以前より高い値段で提供して、さらなる地域住民の貧困化と負担増を強いさせる、地域の土建保守事業型。
もう一つはそれなりのノウハウを持った大都市圏の大企業が地域全体をカバーする、しかし、基本的に公共サービスはその性質上競争のしづらい性質を持つため事実上の独占体制を敷いて、極めて不条理な四半期決算型の事業転換をすることで、大都市の大企業の都合で地域社会ごと振り回される結果を招く、水道の民間事業転換型。)
母数そのものが少ないために多数の企業がさまざまなサービスを行うことで地域社会を動かしていくためのランニングコストを下げる、というやりかたは、地方において、特に母数そのものが急激な減少を示す今の地方の自治体においては、その方法は基本的に絵物語にすぎません、としか言えないのです。
ある意味それは時代遅れの小泉流のやり方です。地方では既に彼のずさんな政策方向は、地方経済というより、地方そのものの人工的な老化とそれら必然としての衰退、で結果が出ています。使えないのです。

じゃあ、だからといって他に方法があるのかと言われればありません。東京を初め、大都市圏の問題と併せて考えて行かなくてはいけないとしか現状言えないのが今の地方の悔しさなんです。

最初の話しに戻しますが、公務員の給料は地方に取っては些末事、むしろ需要そのものを地元で捻出してくれることから、それが地元の税金で養われ、あるいは国家全体の税金から来ているとしても、むしろ総合的には地方は助かっているのです。それを大都市の人がどのように考えているにせよ、です。

問題はそんな給料なんか軽く吹き飛ぶほどの、地域破壊を伴う、地域の公共密着型の各種支配企業や、他地域からやってくる包括支配型企業。それらと手を組む公領域。議会やそれに準ずる団体の闇、それをどう扱うべきかに及び腰な地域のマスコミの方です。
公務員の給料なんてどれだけ人件費がかかろうとも、それで地元に良質な人材が少なくともプールされている以上は、上記の本当の問題に比べれば大した問題ではないのです。実際、安定した給与と雇用が地方の民間に用意できない以上、公務員以外で彼らをつなぎ止める方法はないですから。今の地方は、ここ数年間の間にそれほどまで不安定になっています。

一つのデータにしかすぎませんし、それら一つのデータごときに何を騒いでいるのかとお思いになるかも知れませんが、過去それらのデータを鵜呑みにして、いろんな叩きが行われたり、それを基本にした論調が生まれ、問題がよくなるどころかますます悪化させる例が数え切れないくらいあったので、正直それまでは楽しく見ていた身としてもさすがにまずいと思い、書き込みました。
(その最近の例が、中ほどにあげている、構造的疲労が原因ながらも、しかし人為的なきっかけで起きた医療崩壊

なお、リンクにあげたニートの方も別にサヨでもウヨでも何でもなく、むしろその双方に距離を置いた目で世間を見ている方のようで地方の問題一つにしても、左右どちらにも偏ろうとしない視線で見ようとしています。多分この方も地方の人なのかも知れませんが。

もし公務員の問題が、地方の問題とリンクすると考えるなら、民間に問題を放出することで問題を解決出来ると思うなら、読んでみて損はないと、思います。

むろん、当該記事に書かれているように、月給40万円の電話交換手や50万ももらう門番はおかしいと思います。どうにかせえよ、と思います。自分たちに降りかかる金なんだから、多分あなたよりも深刻に受け止めてます。しかし、それで公務員の給料は高い、と言っても、それを自治体に任せたまま切り捨てたら、恐らく末端や、切りやすい人たちから切られるだけで、もっとも金のかかる本体はみじんともせず(議会が守るわけですよ。自分たちが本来しなくちゃ行けないさまざまな仕事を代行してくれるわけですから)になるのはほぼ間違いないです。それで結果何が起こるかと言えば、事実上のリストラ、職場環境の悪化につながるわけですから、士気はガタガタ、それで汚職も進む、サービスは低下、それを民間転用しようとすれば、まともでないけど、地元の公とつながりのある企業がこぞって参入、コストは以前よりもあがり、どっちにしてもレベルは低下、何よりもまともで良質であるにもかかわらず残った人材には、転換しようとしまいと仕事が量質とも一気に増えて、それら良質な人材は使い潰されて事実上過労死として殺されるか、ないしはまともに仕事ができないくらいに追いつめられるか、あるいは逃げるかです。
残るはあらゆる意味で破綻した、希望も何もない自治体だけでしょう。しかも決して還元されることのない富を抱えた、支配型の企業と、それに癒着した公権力が天下りの約束でもってのさばるおまけ付きで

現状、それらを回避しようにも、民間の転換によって事業そのものの効率化と透明化を図る環境も力量も、今のところ日本のほとんどの自治体にはないんです。ついでに言えば、必死に打開策を模索している地域のあらゆる組織も、今のところそれに代わって何かしようとするほどにまとまってません。未だ急激な衰退に向かってしまったここ数年間の地方の荒れように呆然としているだけです。それが今の地方の率直な現状です。

単純に問題をみようとすればするほど、むしろ問題は複雑化していくことをどうかわかってください、それが2001年以降の流れに簡単に乗っかかってしまった結果、今になって地方が思い知らされていることなのです。

*1:コメントでも指摘を受けているが、地方財政白書によれば、地方公営企業におけるアウトソーシング(外部委託)の実施状況については、実施率(何らかのアウトソーシングを実施している団体数の割合)が都道府県・大都市等の各事業でほぼ100%に近く、市町村等においても特に水道事業(末端供給)、簡易水道事業、ガス事業、病院事業、下水道事業についてはいずれも100%に近い割合を示しているとのことだ。既に分野によって、あるいは地域によっては、かなり外部委託が進められているらしい。