クールビズがもつイメージを見くびった西岡議員

民主党西岡武夫参院議院運営委員長は9日の議運理事会で、「次の国会からクールビズの申し合わせを廃棄し、本会議場、委員会室での議案審議に際してはネクタイ着用を義務化したい」と述べ、本会議や委員会の審議中にネクタイ着用を義務づけるよう求めた。

西岡議員は「参観の子供たちが制服を着ている中、大人がノーネクタイで議案を審議するのはいかがなものか」とクールビズ廃止の理由を主張したが、地球温暖化防止の流れに逆行した時代錯誤の意見といえるだろう。むしろ子供たちの制服をより涼しいものに変えるよう促すぐらいでないとならない。

この提案どうも西岡議員の私案だったようで、他党はおろか民主党でさえ困惑しているようだ。そもそも参議院では半世紀以上にわたりノーネクタイが認められてきた。参議院での議事運営や規律を定めた「参議院先例録」によると、1951年に、「議場では必ず上着着用」だが「ネクタイは外してもいい」という申し合わせが確認されたという。西岡議員の提案は半世紀以上続いた参議院の慣例を変えるものだった。

突然の提案に各党から異論が続出、冷房を弱くしている中ネクタイ着用を義務づけることに対する反対、参議院の慣例を変えることに対する反対など、当の民主党からも勝手なkとをされては困ると批判が出たようだ。

結局、時事通信が伝えたところによれば、西岡参議院運営委員長は10日の同委理事会で、自ら提案した「ネクタイ着用義務化」を議題として取り上げなかった。次の協議日程も示さなかったため、提案を事実上撤回したとみられている。各党とも規制強化に慎重なことから、提案はこのままお蔵入りになりそうだ。

総スカンを食らった形の西岡氏は「本会議や委員会でのネクタイ着用は当然のことで、賛否が分かれると思っていなかった」と当惑気味ということだが、あまりにも空気が読めていないとしか言いようがない。まあ、お年を召した方だから、ノーネクタイに違和感を覚えるのだろうが、すでに時代が変わったと言うことを認識すべきだろう。

もっともクールビズ地球温暖化防止に効果を上げているかと言われれば、どうも怪しいようだ。産経新聞によれば、内閣府がまとめたクール・ビズに関する特別世論調査(平成19年 6月)において、クールビズへの賛同率は83.5%、実施率は46.6%と高い定着率を示しているが、実際に冷房時の温度を28℃より高く設定している割合は35,0%に留まっており、節電にはまだまだ繋がっていない。

個人的にはクールビズは暑苦しいネクタイをしなくてすむ方便に過ぎず、地球温暖化防止には別の対策が必要になると思っている。しかし、高い認知度を背景として、すでにクールビズ地球温暖化防止を推進する一つのイメージとなってしまっているのだ。クールビズ地球温暖化防止効果があろうが無かろうがそんなことは一切関係がない。イメージを何よりも重視する職業のものにとっては、クールビズを利用して、我々は地球温暖化防止に取り組んでますよとアピールすることが重要なはずだ

クールビズの本質は地球温暖化防止効果ではなく、それがもつイメージだ。

だからこそ、本来最もそうしたことには敏感であるはずの老獪な政治家が、このような判断ミスをするなんて俄には信じがたい。ネクタイが持つ立派な人物というイメージと、クールビズがもつ地球温暖化防止推進というイメージとを秤にかけて、何の疑問も持たず前者が重要と判断してしまったに違いない。

残念だが西岡議員、あなたの慣れ親しんだ古き良き価値観はもはや通用しない。その齟齬が理解できないならば、潔く政界から身を引くべきだろう。