葉酸を摂取して先天障害リスク低減を

読売新聞の報道によれば、先天障害リスクを低減させる効果がある葉酸の摂取が進んでいないらしい。

厚生労働省の『神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について』によれば、妊娠を計画している女性に対しては、神経管閉鎖障害の発症リスクを低減させるために、妊娠1か月以上前から妊娠3か月までの間、葉酸をはじめその他のビタミンなどを多く含む栄養のバランスのとれた食事が必要であることとされ、通常の葉酸摂取量に加えて、いわゆる栄養補助食品(サプリメント)から1日0.4mgの葉酸を摂取することとすれば、神経管閉鎖障害の発症リスクは集団としてみた場合そのリスクが低減されることが期待されるとされている。ただし、医師の管理下にある場合を除き、葉酸摂取量は1日当たり1mgを越えるべきではない。

日本における神経管閉鎖障害の発症率は出産1万人対6.0程度でありそれほど高い値ではないが、米国、英国、中国、カナダ等、諸外国では妊娠可能な生殖年齢にある女性に対し、葉酸摂取の勧告がなされている。たとえば米国では1日0.4mgの葉酸摂取を勧告していており、2000年10月には、Rogerらにより米国サウスカロライナ州(二分脊椎の発症が92〜93年で1万人対9人程度)での6年間のキャンペーンの成果として、神経管閉鎖障害の発症率が半減したことが報告された。特に、二分脊椎の発症リスクの低減についての効果が認められたが、無脳症については明らかではない結果が示されている。葉酸と神経管閉鎖障害の症例対照研究によれば、概ね50〜70%程度リスクを低減させるとの報告が多いようだ。

ここに挙げるように葉酸摂取に確実な効果があることは明らかであるにもかかわらず、日本では葉酸摂取が進んでいないという。73%の妊婦が葉酸の効能を知っており、厚生労働省葉酸摂取の呼びかけは半数の48%に周知されていた。ところが、実際に「葉酸を意識してとっていた」と答えた妊婦は16.9%だけ。サプリメントなどを用いて、積極的に葉酸を摂取していたのは全体の13.5%に過ぎず、葉酸の知識が実際の行動につながっていないことが明らかになった。

神経管閉鎖障害は致命的な障害であり、この障害を持った子供は長く生きられない。こと命に関わるリスクは少しでも少ない方が良いのは明らかであり、女性が適切な量の葉酸を摂取できる環境を作ることが必要だろう。難しいのは、妊娠前1ヶ月から摂取の必要があり、必要量は食物からの摂取では足りずサプリメントによる補給が不可欠という点だ。米国ではシリアルなどの穀物加工品に葉酸の添加を義務づけていると言うが、日本でも米とか醤油など日常利用するものに添加をすべきかもしれない。

生まれてくる子供には確かに無限の可能性がある。しかし悲しいかな、無限にも大小があるのだ。有理数の数は無限だが、無理数の数に比べたら少ない。なるべく大きな可能性を子供に与えたいと思うのならば、必要な努力は惜しむべきではない。サプリメントを毎日採るぐらいならたいしたことはないはずだ*1

*1:男性である筆者が葉酸を採っても先天障害リスクの低減には繋がらないが、個人的にはネイチャーメイド・マルチビタミン&ミネラルを常用している。ちょっと高いが。