人類が滅亡した後、地球上に高度文明が発達することはない

~VISTA


らばQの地球から人類が消えても、永遠に残るものでは、人類が死滅した後人類の活動痕跡がどのような過程でそのカタチを失っていくかを考察した興味深いエントリである。原文は"The World Without Us - Alan Weisman"で、ブロンズ像は後世に人類の足跡を残すのになかなか優れた性能を示すようだ。

しかしながら、仮に人類が核戦争かなにかで地球上から滅亡した後、人類の後継者が地球上で誕生し、高度文明を作り上げるところまで進化するのは難しい。地球が太陽に飲み込まれるまで後およそ50億年。地球の年齢は46億年であるので、後半分の寿命を残していることになり、人類の滅亡後30億年後には思いもよらない地上を闊歩しているだろうが、彼らが現在の我々のレベルまで文明を発達させるのは望み薄といわざるを得ない。

理由はエネルギーにある。人類の進化の原動力となったのは、エネルギー変換効率・入手性・利用性に優れた石油にあることは論を俟たないが、人類の後継者には石油は与えられない。

石油の可採年数は1970年代に残り35年とされたが、現時点でもまだ数十年分は確保されていると見られる。可採年数が増えたのは確認埋蔵量の増加もさることながら、採掘技術の向上によるところが大きい。現在では30年前には採掘しようもなかった場所・状態の石油を採掘することができるようになっているのだ。

言い換えれば、簡単に採掘可能な石油はほとんど残っていないということだ。現在地球上で残っている石油のほとんどはある程度技術レベルが向上しないと利用できない場所・状態にあると言える。

人類の後継者は石油というエネルギー源を利用することができない。必要なエネルギーが得られない生命体が文明を発達させるのは極めて困難だ。石炭は豊富にあるので、蒸気機関の実用化まではこぎ着けるだろうが、その次の段階に進むのには人類に比して長い時間を要するだろう。

もちろん、石油が再度生成されるという可能性はある。石油の生成過程は完全には解明されていないが、現時点では生物由来説が有力である。人類社会が今までのペースで発達するのに地球が46億年かけて蓄えた石油が必要だった。とするならば、人類の後継者が、文明を発達させるのに必要な量の石油が精製されるのにも長い時間がかかることが予想される(生命体の誕生プロセスをショートカットできるので46億年よりは短くなることが期待されるが)。しかも、石油がもう一度作り出される保証はどこにもないのだ。

このように地球にとって、高度文明を発達させるチャンスは人類がラストチャンスか、上手くいってあと1度あるかどうかであることが分かる。我々人類は針の穴を通すような希有な幸運を積み重ねて、これまで文明を発達させることができた。この幸運を自ら捨ててしまうような愚だけは避けたいところだ。