家庭用洗濯機は過去の遺物になるか?

by clemente


一昔前は各家庭にミシンがあって、家で母親が服を縫うということが当たり前の風景だったが、最近では服は買うもの、破れたら買い換えるものになって、めっきり家庭でミシンを使う機会が減った。

家庭用ミシンの市場規模もかつての面影はない。経済産業省生産動態統計によれば、平成18年の家庭用ミシンの販売台数は419,160台、販売金額にして107億円程度となっている。平成14年でも台数としてはほぼ同じだが、販売金額は50億円ほど減少している。一定数の需要はあるがじわじわと低価格化が進行している典型的な成熟市場と言える。

ミシンが登場した当初は夢のマシンとして全国の主婦に熱狂的に受け入れられ、羨望の商品であった。ミシンの稼働率は現在と比較にならないほど高く、家庭を預かる主婦の主要な仕事の一つだった。その当時、ミシンがない家庭が増えるということを予言したとしても、一笑に付されただろう。ところが現実は、ミシンは各家庭からどんどん姿を消している。

さて、洗濯機は今現在ほとんど全世帯にあるだろう。かつてのミシンと同様に、洗濯機は洗濯という主婦の主要な仕事をこなすのに必要不可欠の機器であり、洗濯機が無かった時代の苦労は想像できないほどだ。先の生産動態統計によれば、平成18年における家庭用洗濯機の販売台数は4,590,398台、販売金額は2055億円。こちらは平成14年に比べて販売台数、販売金額とも増加している。高価格の洗濯乾燥機が売れていることがその要因だろう。

洗濯機が各家庭から消えると言えば、あなたは一笑に付すだろうか?

朝日新聞が伝えたところによれば、下着やTシャツなどクリーニング店には頼みにくい日用的な衣類の洗濯を代行する会社が登場し、繁盛しているという。米国生まれのこのサービス、なかなか魅力的である。

 東京・阿佐谷。JRの駅へ続く通りに洗濯代行サービス「デリウォッシュ」がある。今春、開店した。12坪の店内で洗濯機と乾燥機計8台が回っている。

 午後8時過ぎ。スーツ姿の男性(23)が仕事帰りに立ち寄った。1600円を支払い、Tシャツやポロシャツ、下着でいっぱいの袋を預けた。

 損保会社で働き始めて2年目の一人暮らしだ。「土日にゆっくりできるなら、安いもの」。共働きで苦労した実家の母に「便利な時代になったものね」とうらやまれる。

 容量7〜8キロ、Tシャツなら50枚は入る専用の袋を使う。ビジネスマンが利用しやすいよう、営業時間は午後11時まで。朝が早い通勤途中でも、ボックスに預けておけば、帰りに受け取れる。

http://www.asahi.com/life/update/0918/TKY200709180308.html

DeliWash(デリウォッシュ)だと、持ち込みで1,600円、宅配で2,380〜3,600円、WASH&FOLDだと、持ち込みで2,000円、宅配で2,800円。システムは両方とも同一で6〜8kg、Tシャツだと50枚、ポロシャツだと30枚、フェイスタオルだと80枚程度が入る専用のランドリーバックに詰め放題で、洗濯してたたんで返してくれる。洗濯乾燥機の水道代、電気代がかからなくなるし、洗濯したり干したりたたんだりする手間もなくなる。なによりもそうした仕事に費やす時間が無くなるのが大きい。

 5年前、国民生活白書が「夫1人が働き、専業主婦と子供2人」という「標準世帯」を見直したことに刺激を受けた。共働きや一人暮らしの増加というライフスタイルの変化に合う新しいビジネスを模索し始めた。スーパーや弁当屋で買う総菜が食卓で一般化し、使いやすい家政婦サービスも出てきた。外注が進む家事の「最後の聖域が洗濯」と考えたという。

http://www.asahi.com/life/update/0918/TKY200709180308.html

現在は家庭で行うことが当たり前な洗濯が、専門業者に依頼することが一般的になる時代が来るのだろうか? 今は都心部など限られたところにしか無い洗濯代行サービスが全国にフランチャイズ展開し、利用料金の低価格化が進めば一気に普及する可能性もあるだろう。家庭用洗濯機が10年後、20年後にも変わらず家庭にあるかどうかは、結構微妙なのかもしれない。