首相無しでもやっていける不思議の国日本

9月25日、自民党福田康夫氏が第91代内閣総理大臣に任命され、12日に安倍元首相が入院してから2週間にわたって続いてきた権力の空白がようやく終わった。この間政府は安倍首相の病状の詳細を説明せず、職務を代行する臨時代理も置かなかったわけだが、危機管理としてあまりにお粗末ではないか。

 内閣法9条では、首相に事故のある時や首相が欠けた時、あらかじめ指定された国務大臣が臨時に首相の職務を行うと規定している。臨時代理を置かない理由について、与謝野氏は18日、「お目にかかって話をすれば判断はしっかりしている。どうしても官邸に戻らなければならない危機が起きた場合、パトカーがつけば5分くらい。危機管理上、問題はない」と語った。

 ただ、首相の容体は「機能性胃腸障害が悪化し、全身が衰弱」との主治医の13日の会見後、表だった説明はない。首相との面会は与謝野氏と首相秘書官、家族に限られているが、与謝野氏も医師から詳しい病状の説明は受けていない。

http://www.asahi.com/politics/update/0922/TKY200709220238.html

5分もあれば北朝鮮から発射された短距離弾道ミサイル(SRBM)は東京に着弾しているが、1分1秒を争う時に全身が衰弱した安倍首相に、的確な判断ができる状況だったのだろうか。与謝野官房長官も意思から詳しい症状の説明を受けていないというのに、なぜ問題がないと言い切れるのか釈然としない。

内閣総理大臣は、日本に対する外部からの武力攻撃が発生した事態または武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態に際して、日本を防衛するため必要があると認める場合に防衛出動を命じるなど、日本の危機管理上極めて大きな責任を持つ。その責任が宙に浮いたまま2週間も何事もなく存続できる日本はなんて平和なのだろうか。

英ファイナンシャル・タイムズはJapan gets by without a prime minister(日本は首相無しでもやっている)とする記事で、危機感のない日本の現状を痛切に皮肉った。

In Japan, Shinzo Abe, the boy prime minister - at 52, the verdict was he was too young for the job - quit on September 12 for reasons that are still not entirely clear. A new leader of the ruling Liberal Democratic party will be chosen next Sunday and confirmed as prime minister by parliament on September 25. The day after he resigned, an exhausted Mr Abe checked into hospital - and checked out of government. Just who, precisely, is in charge?

That nobody seems bothered - or even really to have noticed - raises some interesting questions about the nature of power and democracy in Japan.

日本では、52歳という異例の若さで首相になった安倍晋三氏──結果としては総理という重責を担うには若すぎたわけだが──が未だ明らかになっていない理由により9月12日に職を辞した*1。与党自民党を率いる新たなリーダーは翌日曜日に選出され、9月25日には国会で内閣総理大臣に指名される予定である。辞めてからというもの、衰弱した安倍首相は入院し、政府を離れた。さて、まさに今、だれが権力を代行しているのだろうか?

誰もそれに悩んでおらず、また、その必要性に気づいてさえいないように見える状況を見るに、日本における権力と民主主義の実態に関していくつもの疑問が持ち上がる。

http://www.ft.com/cms/s/0/fbc74f64-6711-11dc-a218-0000779fd2ac.html

権力が集中するアメリカの大統領と直接比較することはできないが、一国の首相が病で満足に働けない状況を2週間にもわたり放置するのは、危機感が無いと言わざるを得ない。有事にこの国はまともに機能することができるのか不安ばかりが募ることとなった。

*1:訳注:正確にはこの時点で彼はまだ辞めていない