広辞苑にはもうちょっと歩み寄ってほしい
朝日新聞によれば広辞苑が10年ぶりに改訂され来年1月に第6版が発売される見込みとのことだ。
新収録項目で目に付いた単語としては、「癒し系」「さくっと」「うざい」「クレーマー」「マイブーム」「サービス残業」「ニート」「メタボリック症候群」「ブログ」等、それなりに新語が登録されているようだ。しかし、よくよく見てみると変な表記が散見される。
「いけ面」「逆切れ」「引籠り」などは「イケメン」「逆ギレ」「ひきこもり」の表記のほうが自然だろう。ちなみにGoogleの検索結果は次の通りだ。
- いけ面:54,000件
- イケメン:7,560,000件
- 逆切れ:730,000件
- 逆ギレ:1,210,000件
- 引籠り:523件
- ひきこもり:3,150,000件
- 引きこもり:2,380,000件
- 引き籠もり:1,040,000件
新聞における表記はもしかすると広辞苑の表記のほうが正しいのかもしれないが、なぜ最も利用されている表記ではなく、異なる表記を採用するのか?*1 特に「引籠り」は送りがなの通則から言えば正しいのだろうが、ネット上でこういう表記をされることは極めて稀である。理由は明らかで、IMEやATOKなどのかな漢字変換が候補に出さないからだ。
新語の表記がかな漢字変換ソフトによって決定されるというのは怖い感じもするが、広辞苑が正しい表記を押しつけるというのも変な話だ。なぜ最も一般的な表記を見出し語としないのか?
広辞苑といえば国語辞典の定番だが、使いやすさの点では三省堂の大辞林のほうが優れているとの評判が高い。広辞苑は語句の意味を語源から時系列に並べるので、しばしば最も一般的に利用される意味が後ろ方の項番に記述されることがある。一方、大辞林は最も一般的に利用される用法から順に並べるので、一番先頭に望む意味が表記されている場合が多い。
広辞苑の編者にもポリシーがあるのだろうが、現代国語を扱う国語辞典としては、もっとユーザ側に歩み寄ってくれても良いと思う。
かといって、右上図に示したような解説が広辞苑に載ったらそれはそれで吃驚なのだが。
*1:見出し語はひらがな表記となるので表記の揺れは吸収されている。