日本人をイライラさせる極悪なCM

朝日新聞が『「正解はCMのあと」は逆効果 視聴者86%「不愉快」』として伝えたところによれば、盛り上がる場面で「正解はCMのあとで」と言うように視聴者を引っ張る「山場CM」に不快感を覚える人が多く、CMの対象への印象も悪くなることが榊博文・慶応義塾大教授らの調査によって明らかになった。

この調査に関しては、歌田明弘の『地球村の事件簿』: CMにこれほどイライラさせられているのは日本人だけ?において既に取り上げられているし、なぜ人は思い通りに動かないのか(第4回) (入門! 社会心理学):NBonline(日経ビジネス オンライン)においては柳教授自ら解説されている。

山場でぶった切り視聴者を引っ張る「山場CM」と、一段落した箇所で挿入される「一段落CM」に対して、視聴者の印象を尋ねるアンケートを取ったところ、結果は次の表のようになった。


そう思う      どちらとも言えない そう思わない  
山場CMは不愉快 86% 7% 7%
山場CMは好感が持てない 84% 14% 2%
山場CM商品は買いたくない 34% 63% 3%
一段落CM商品は買いたくない 9% 72% 19%
シーン繰り返しはイライラする 74% 17% 9%

商品を購入を促したいCMにおいて、逆に視聴者に悪印象を与えている山場CM。CMに対する認知反応が起こる前に感情反応が生じ、CM内容を理解したり納得したりすることを阻害しているとされている。山場CMの商品を買いたくないと答えた人は一段落CMに比較して3.8倍。逆に一段落CM商品を買いたいと答えた人は、山場CM商品を買いたいと答えた人の6.6倍にも達している。どちらがCMとしてより効果的かは言うまでもないだろう。なぜこんな逆効果なCMの出し方が日本ではびこっているのか理解に苦しむ。

日本、アメリカ、イギリス、フランスの各国におけるCMをニュース、ドキュメンタリー、ドラマ、バラエティ、スポーツ、クイズのジャンルごとに調査したところ、各国の山場CMの割合は次のようになったという。

国名山場CMの割合
日本40%弱
アメリ14%
イギリス6.4%
フランス0%
山場CMの割合は日本が突出して高く、バラエティ、クイズ、ドキュメンタリーでは山場CMが大半を占め、山場CMが見られなかったのは映画とスポーツぐらいだったという。アメリカでも日本と同様のジャンルで若干山場CMが高い傾向が見られたが、日本に比べれば低い頻度に留まっている。

イライラするCMを避けるため、日本ではCM中にチャンネルを切り替えるザッピングをしたり、携帯電話をいじってメールをしたりする人が多い。こうしてCMはますます見られなくなるのである。TV局は自ら自分たちの収益の源であるCMの商品価値を下げる番組編成を行っているのだ。馬鹿としか言いようがない。

他国で山場CMが少ない理由の一つに法規制がある。他国では、CMを流す時間量や回数に制限がかけられている上、「過度に騒がしくなく耳障りでないこと、番組の自然な切れ目に限る」といった規制がなされているという。日本にはそのような規制がないため、イライラさせられるCMが量産されると言う訳だ。

この調査結果に関し、関係者は次のようなコメントを行っている。

 日本アドバタイザーズ協会(旧・日本広告主協会)の小林昭(ひかる)専務理事は「初耳の研究結果だ。テレビ局が決めているCMを入れるタイミングについて議論したことはなかったが、今後の対応を検討していきたい」という。

 一方、民放テレビ局は「視聴者の受け止め方に関心を払わなければいけないが、CMのあとも見ていただく努力については度を超さない限りは許していただきたい」(テレビ東京)、「CM明けについての説明は親切に告知する意味合いもあると思うが、視聴者の声に対しては謙虚に耳を傾け、その感性に敏感でなければならないと考えている」(テレビ朝日)と言っている。

http://www.asahi.com/culture/update/1106/TKY200711060131.html

日本アドバタイザーズ協会の理事ともあろうものが、CMに対する視聴者の不満に無頓着であったことに驚きを禁じ得ないが、今回の調査で明らかになった視聴者の不満を解消する形で、日本のテレビCMのあり方が改善されることを期待したい。スポンサー企業がウチの商品は山場CMとしては使ってくれるなと要求すれば早い話だと思うのだが。