Samsung日本撤退が意味するモノ

ITmediaが伝えているように、テレビや携帯電話の世界シェアにおいて日本勢を圧倒する勢力を有するSamsungが日本のコンシューマ向け家電販売から撤退することとなった。

品質的には日本メーカーに比べても遜色なく、価格は日本メーカーに比べて総じて安い。そんなSamsung製品が日本市場で受け入れられなかったのは、"安かろう、悪かろう"というアジア製品に対するイメージを払拭できなかったことに一因があるのは間違いない。家電量販店で販売されている名も知らないメーカーの怪しげな家電製品。日本製に比べて格段に安いが、安いだけあって基本性能や機能において見劣りする場合が多い。多くの日本人にとって、Samsungは怪しげなアジアメーカーの一つでしか無かったのだ。

欧米においても、韓国製品のブランドイメージは決して高いとは言えなかった。ブランドイメージを向上させるためにSamsungが目をつけたのは、"Made in Japan"に対するブランドイメージであった。言うまでもなく、日本製は諸外国において高い評価を得ており、それにあやかることができれば、Samsungのブランドイメージも向上することが期待される。

Samsungがフランスで放映したCMが話題になったことがある。富士山らしき山が大写しになるというもので、日本を強烈にイメージさせる。実際には背景の山は富士山ではなく、南米のVolcan Lonquimayということだが、日本を想起させることを意図して作られたのは明らかだ。

Hyundaiはもう少し露骨で、相撲力士を用いた広告キャンペーンを行ったことがある。相撲が日本を連想させることは言うまでもない。もちろん、富士山に似た山を使おうが、力士を使おうが、そんなことは企業の自由である。ただ、こうした広告において日本を連想させる意図が無かったとは言えないだろう。

朝鮮日報の"【萬物相】サムスン電子は日本企業?"によれば、米国の大学生を対象に行われた調査において、Samsungが日本企業とする回答が57.8%にも上ったという。LG電子も41.9%は米国企業、26%は日本企業と錯覚していた。Hyndaiも55.7%は日本企業だと思っていたという。この状況は韓国企業にとってはプラスに働いた。

 問題はむしろ、韓国製品の信頼度が39.7%にとどまり、81.8%を記録した日本製品の半分にも満たなかったという点だ。これでは韓国企業にとっては、日本企業と間違われていたほうがありがたいという話になる。米国の若者がサムスン・LG・現代を韓国の企業として認知していないからといって残念に思う必要はないが、実はそのおかげでサムスン・LG・現代の製品が売れているとしたら、それは憂うべきことだ。

http://www.chosunonline.com/article/20070528000013/

明らかに過去の少なくとも一時期において、韓国企業の製品が、日本企業製品と誤解されたことによって販売を伸ばしたことは間違いない。その誤解が生じなかった日本において、Samsungが撤退を余儀なくされたのは、当然の帰結と言える。日本において、Samsungを日本企業と誤解する人はいなかったのだ。

しかしながら世界に目を向けると、21世紀に入り状況は一変した。Samsungブランドは世界に冠たるブランドとして確立し、海外におけるSamsung製品に対する信頼度も格段に向上している。海外においては、既にSONYPanasonicと言ったブランドに勝るとも劣らないブランドイメージを確立していると言ってよい。逆に言えば、日本企業の優位性が残っているのは、日本国内においてのみなのである。

Samsungの日本撤退は、韓国ブランドが日本ブランドに劣っているからでは決して無く、日本企業が地の利を生かして最後の砦をとりあえず死守したと捉える方が良さそうだ。いつまでも守ってばかりではジリ貧なのは目に見えているので、日本メーカーの奮起に期待したい。