意外とみんなゆとりだった

「これだから、ゆとりは……」

ネット上の掲示板でよく見るやりとりである。主に義務教育においてゆとり教育を受けたゆとり世代人間性、理解力の稚拙さ嘲笑する文脈で利用される。本来「ゆとり」という言葉自体に悪い意味は無かったはずだが、どうも悪い意味がつき始めている印象がある。

ゆとり世代には主に平成生まれが該当する。彼らが小学校に入学した頃には毎月第二・第四土曜日が休日となる学校五日制が導入されており、指導内容が三割も削減された学習指導要領に従って教育が行われた。このゆとり教育の弊害は学力低下という形で明確に現れており、文部科学省ゆとり教育の見直しを迫られている。

個人的には最低限の学力も有しない学生を大学に入れるべきではないとする持論があり、大学数は1/3ぐらいに減らすべきだと思っている。ただ、分数の計算もできないような大学生が生まれるのは、ゆとり教育とは別の要因も絡むのでひとまとめにして議論するのは危険かも知れない。

と言う具合に、自分はゆとりではないという自負があったわけだが、あなたはどの指導要領?に衝撃的な事実が掲載されていて、目を疑ってしまった。

  • 現代化カリキュラム(1971年〜1979年/昭和46年〜昭和54年)
    戦後最高レベルの指導要領。とにかく学習することが多いうえ、学習内容もハイレベル。
  • ゆとりカリキュラム(1980年〜1991年/昭和55年〜平成3年)
    現代化カリキュラムによる落ちこぼれを防ぐために、学習内容を少し削減したもの。
  • 旧指導要領(1992年〜2001年/平成4年〜平成14年)
    「新しい学力観」のもと、ゆとりカリキュラムよりさらに学習内容を削減したもの。ちなみに月に数回土曜日が休みになったのもこの頃からです。
  • 新指導要領(2002年〜 平成15年〜)
    学習内容が大幅に削減された指導要領。学校5日制に完全対応しています。総合的な学習の時間が創設されました。


誕生日1年生2年生3年生4年生5年生6年生
1959年4月〜1960年3月-----現代
1960年4月〜1961年3月----現代現代
1961年4月〜1962年3月---現代現代現代
1962年4月〜1963年3月--現代現代現代現代
1963年4月〜1964年3月-現代現代現代現代現代
1964年4月〜1965年3月現代現代現代現代現代現代
1965年4月〜1966年3月現代現代現代現代現代現代
1966年4月〜1967年3月現代現代現代現代現代現代
1967年4月〜1968年3月現代現代現代現代現代現代
1968年4月〜1969年3月現代現代現代現代現代ゆとり
1969年4月〜1970年3月現代現代現代現代ゆとりゆとり
1970年4月〜1971年3月現代現代現代ゆとりゆとりゆとり
1971年4月〜1972年3月現代現代ゆとりゆとりゆとりゆとり
1972年4月〜1973年3月現代ゆとりゆとりゆとりゆとりゆとり
1973年4月〜1974年3月ゆとりゆとりゆとりゆとりゆとりゆとり
1974年4月〜1975年3月ゆとりゆとりゆとりゆとりゆとりゆとり
1975年4月〜1976年3月ゆとりゆとりゆとりゆとりゆとりゆとり
1976年4月〜1977年3月ゆとりゆとりゆとりゆとりゆとりゆとり
1977年4月〜1978年3月ゆとりゆとりゆとりゆとりゆとりゆとり
1978年4月〜1979年3月ゆとりゆとりゆとりゆとりゆとりゆとり
1979年4月〜1980年3月ゆとりゆとりゆとりゆとりゆとりゆとり
1980年4月〜1981年3月ゆとりゆとりゆとりゆとりゆとり旧指導
1981年4月〜1982年3月ゆとりゆとりゆとりゆとり旧指導旧指導
1982年4月〜1983年3月ゆとりゆとりゆとり旧指導旧指導旧指導
1983年4月〜1984年3月ゆとりゆとり旧指導旧指導旧指導旧指導
1984年4月〜1985年3月ゆとり旧指導旧指導旧指導旧指導旧指導
1985年4月〜1986年3月旧指導旧指導旧指導旧指導旧指導旧指導
1986年4月〜1987年3月旧指導旧指導旧指導旧指導旧指導旧指導
1987年4月〜1988年3月旧指導旧指導旧指導旧指導旧指導旧指導
1988年4月〜1989年3月旧指導旧指導旧指導旧指導旧指導旧指導
1989年4月〜1990年3月旧指導旧指導旧指導旧指導旧指導旧指導
1990年4月〜1991年3月旧指導旧指導旧指導旧指導旧指導新指導
1991年4月〜1992年3月旧指導旧指導旧指導旧指導新指導新指導
1992年4月〜1993年3月旧指導旧指導旧指導新指導新指導新指導
1993年4月〜1994年3月旧指導旧指導新指導新指導新指導新指導
1994年4月〜1995年3月旧指導新指導新指導新指導新指導新指導
1995年4月〜新指導新指導新指導新指導新指導新指導

http://www.h4.dion.ne.jp/~kyouiku/nenrei.htm

上記の誕生日と指導要領との対比表を刮目してもらいたいが、これによれば、筆者はゆとりカリキュラムを受けた、紛れもないゆとり世代なのである。もっとも現代化カリキュラムに比べ削減量は少なく、後の旧指導要領、新指導要領に比べれば学習量も多かったと考えられ、世間的にはゆとり世代は旧指導要領の導入以降を指す場合が多く、通常ゆとりカリキュラム世代をゆとり世代と呼ぶことはないと思われる。

しかし、これに基づけば次の返しが可能にある。

「お前だってゆとりのくせにっ!」

ゆとり世代の人は存分に活用してもらいたい*1

*1:年長者が「最近の若者は……」と、若者の行いを憂うのは、人類始まって以来脈々と受け継がれてきた伝統みたいなもので、メソポタミアで発掘された世界最古の粘土板に若者に対する愚痴が書いてあったとか、ソクラテスとかプラトンが嘆いたという話しがあるが、これは真偽が疑わしい。どうも『アシモフの雑学コレクション』が元ネタになっているようだが、吹風日記によれば該当するソースは確認できなかったようだ。