ケンタッキー・ゴキブリ騒動が示すメディアリテラシー教育の重要性

吉野家のアルバイト店員が山盛りの「テラ豚丼」を作り、ニコニコ動画に「吉野家で】メガ牛丼に対抗して、テラ豚丼をやってみた【フリーダム】」というタイトルでアップ、吉野家が謝罪文を発表し、犯人の店員2名が処分される事件が起こったところだが(吉野家テラ豚丼 まとめ)、12月5日にはケンタッキーフライドチキンのアルバイト店員が、「店でゴキブリを上げた」とmixiで告白、大騒ぎとなった。

テラ豚丼〜 2007年12月05日02:13

おもしろすぎでしょ
バイトしてればそんなことやっちゃうよねー
ケン〇ッキーでゴキブリ揚げてたムービー撮ればよかった

こんなことmixiで書けば展開が見えているが、即座に犯人の高校生の個人名、高校名、経歴、ケンタッキー店舗名などが明らかにされた。ネット上で大問題となり、同日夜には本人が「いたずらで嘘を書いた」と保護者同伴でケンタッキーに謝罪に行ったようだ(ケンタッキーフライドチキン:ネット投稿に対する当社の対応について)。

ITmediaによれば、同社は「食品を扱う者としてどう考えてもありえない内容で、事実無根。当社が本人とコンタクトを取る前・5日夜に、本人が保護者同伴で当社を訪れ、『単なるいたずらで嘘を書き込んだ』と謝罪に来た」としているが、何を根拠にありえないと断言できるのかは不明確だ。それを言うなら、食品を扱うサービス業に従事しているものとして、mixiにこのような書き込みを行うこともあり得ない。

昆虫料理研究には実際にゴキブリ料理が紹介されている(生理的に受け付けない人もいると思うので、閲覧注意)。第22回例会にはマダガスカルゴキブリのフライが紹介されており、180℃でからっと揚がるようだ。第14回例会にはヤマトゴキブリの塩焼き、第10回例会にはゴキブリの唐揚げと種類豊富である。当該ページには、「これを読めばみなさんも虫に対する偏見から解放されて、食べてみたくなること請け合いです」とあるが、いかがだろうか。

なんにせよ、ゴキブリを揚げるのはさほど難しくなく、アルバイトでも既存の設備を使って簡単に試すことができただろう。問題は実際にやったかどうかということだが、それを実証することは不可能であり、本人及び店側の言い分を信じるしかないだろう。

J-CASTによれば、この生徒は「社会的責任を取りたい」として高校を自主退学したようだ。校則で禁止されているアルバイトを行った上、世間を騒がせる事件を起こし、mixiには飲酒やカンニングを告白する書き込みもあったようだから、停学処分は免れなかっただろうが、退学は可哀想な気もする。高校卒業間近でこの学生の人生は大きく狂うこととなったわけだ。

彼の落ち度は自分がmixiに書いた内容がどういう事態を引き起こすかということに対する理解が絶望的なほど不足していたということに尽きる。ネットという情報発信メディアにどのように向き合い、どのように活用していくか、ということは授業で扱われないのだろうか。携帯電話上のSNSが若者のコミュニケーションにおいて不可欠なツールとなっている現状において、必要最小限のメディアリテラシーに関する教育が行われていないのは由々しき事態だ。

近年のネット社会への急速な移行によりコミュニケーション形態は猛烈なスピードで変化している。筆者らの所属するPC世代と、中高生らのケータイ世代でさえ、コミュニケーションのやり方からして全く異なっている。旧態依然とした学習指導要領がその変化に対応できるはずもなく、彼らが必要なリテラシーを習得できるかどうかは、現場に委ねられている。今回の事件を契機にメディアリテラシーに関する教育教材や学習の手引きが充実することを期待したい。