クリントン長官のこどもの日へのメッセージ(和訳)と世界の子供たちの現実
読売新聞が報じたところによれば、クリントン長官が日本のこどもの日にあて、子供たちの幸せを願うメッセージを発表した。米国国務長官がこどもの日にメッセージを送ることは異例ということだが、家族に関するメッセージを発表したいという国務長官の思惑と、日本の祝日のタイミングがちょうどマッチしたということだろうか。
Japan Children's Day
Hillary Rodham Clinton
Secretary of State
Washington, DC
May 4, 2009It is my pleasure to offer warm wishes to boys and girls in Japan on the May 5 occasion of Children’s Day. On this holiday, Japanese families celebrate the joys of childhood and family life. Children are, indeed, a national treasure, and both the United States and Japan share a strong commitment to childhood health, safety, and education. It is a responsibility for all of us to work together to ensure the protection of children. It is our hope that one day children from all countries will be able to celebrate the carefree joys that children in Japan celebrate today.
http://www.state.gov/secretary/rm/2009a/05/122583.htm
以下、短いが意訳。
日本のこどもの日に
ヒラリー・ローダム・クリントン
アメリカ合衆国国務長官
ワシントンDC
2009年5月4日5月5日のこどもの日に、日本の少年少女たちに心からお慶び申し上げます。この日、日本の家族は、子供たちの幸せな日々と家族の健康を祝うそうです。子供たちは、かけがえのない国の宝です。合衆国と日本は、子供たちの健康と安全、教育に対する強い義務感を共有しています。子供たちをしっかりと守って育んでいくことは、我々全てに課せられた使命です。世界中の子供たちが、日本の子供たちのように憂いのない喜びを祝う日が来ることを願っています。
クリントン長官は、世界の子供たちが、米国や日本のような先進国並の幸せを享受できる世界を望んでいるようだが、それはどの程度現実性のある話だろうか。
次の表はユニセフによる世界子供白書2008「子どもの生存」の基本統計表の抜粋である*1。この表を見ると、日本や米国の属する先進工業国と世界、特に後発開発途上国との間には極めて大きな格差が存在していることが分かる。先進国との格差が10倍を超えるところは赤字で示している。アフリカ諸国、南アジアの現状は悲惨と言っても良い。
カテゴリ 5歳未満児死亡率 乳児死亡率(1歳未満) 新生児死亡率 総人口(1000人) 年間出生数(1000人) 5歳未満児の年間死亡数(1000人) 1人あたりのGNI(米ドル) 出生時の平均余命(年) 成人の総識字率(%) 初等教育純就学/出席率(%) 世帯あたりの所得の分布(%)
1995-20041990 2006 1990 2006 2000 2006 2006 2006 2006 2006 '00-'05 '00-'06 最下位
40%最上位
20%サハラ以南のアフリカ 187 160 111 95 44 748886 29889 4786 851 50 58 66 13 55 東部・南部アフリカ 165 131 102 83 40 370361 14074 1844 1171 50 60 70 11 58 西部・中部アフリカ 208 186 119 107 48 378525 15815 2942 553 50 57 62 16 49 中東と北アフリカ 79 46 58 36 26 382048 9617 442 2104 69 73 85 17 46 南アジア 123 83 87 62 44 1542571 37942 3149 777 64 58 82 19 46 東アジアと太平洋諸国 55 29 41 23 20 1968675 29764 863 2371 72 91 97 17 46 ラテンアメリカとカリブ海諸国 55 27 43 22 15 559525 11418 308 4847 73 90 93 12 56 CEE/CIS 53 27 43 24 18 405584 5529 149 4264 68 97 92 20 42 先進工業国 10 6 9 5 4 969949 11003 66 37217 79 - 96 21 40 開発途上国 103 79 70 54 33 5358223 121685 9614 1967 66 76 84 15 50 後発開発途上国 180 142 113 90 43 785444 28661 4070 438 55 55 65 15 50 世界 93 72 64 49 30 6577236 135163 9733 7406 68 78 86 20 42 世界子供白書2008「子どもの生存」 表1:基本統計
- 5歳未満児死亡率
- 出生時から満5歳に達する日までに死亡する確率。出生1,000人あたりの死亡数で表す。
- 乳児死亡率
- 出生時から満1歳に達する日までに死亡する確率。出生1,000人あたりの死亡数で表す。
- 新生児死亡率
- 出生時から生後28日以内に死亡する確率。出生1,000人あたりの死亡数で表す。
- 1人あたりのGNI
- GNI(国民総所得)とは、すべての居住生産者による付加価値の額に、生産評価額に含まれないすべての生産品税額(補助金は控除)および非居住者からの1次所得(被用者の報酬および財産所得)の正味受取額を加えた総額である。1人あたりのGNIは、国民総所得を年央の人口で割って算出する。1人あたりのGNIの米ドル換算値は世界銀行アトラス計算法によるものである。
- 出生時の平均余命
- 新生児が、その出生時の人口集団の標準的な死亡の危険のもとで生きられる年数。
- 成人の識字率
- 15歳以上で読み書きできる者の数。当該年齢層の総人口に占める比率で表す。
- 初等教育純就学/出席率
- 初等学校に就学する、あるいは通学する子どもの数。初等教育就学年齢の子どもの総人口に占める比率で表す。指標は、初等教育純就学率、あるいは初等教育純出席率のどちらかである。両方の指標が入手できる場合は、初等教育出席率のデータが特に優れている場合を除いては、初等教育純就学率を用いる。
- 所得の分布
- 所得の受取額から見て上位20%の世帯と下位40%の世帯がそれぞれ受け取っている所得の比率。
死亡率の推移を見ると一応の改善は見られるものの、クリントン長官が望むように、世界中の子供たちが憂いのない喜びを祝う日が来るのはまだ当分先の話だろう。残念ながら。