世界最古の飛行機と自尊心

痛いニュースで話題になっているが、innolife.netによれば、世界初の飛行機は、ライト兄弟より300年先に作られた朝鮮時代の鄭平九による“飛車”との主張があるようだ。

朝鮮後期実学者シン・ギョンジュンの『旅庵全書』と、イ・ギュギョンの『五洲衍文長箋散稿』には、「壬辰の乱の時、鄭平九と言う人物が飛車を作り、晋州城に閉じこめられた人々を城外に連れ出したが、その飛車は30里を飛んだ」と言う記録が残っている。しかし遺物や設計図のような証拠がないため、歴史的定説として認められることができない。

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韓航空釜山気体整備工場課長コ・ウォンテ氏は、長年の研究を経て、飛車の存在を確信、小説という形で考証にのりだし、飛車を題材とした航空小説『忘れられた私達の飛車』を出版したらしい。考証がなぜ小説というフィクションの形で行われるのかさっぱり分からないが、遺物や設計図のような証拠がないのであれば、空想の類と考えたほうが良いだろう。空を飛ぶ話なら世界中の神話や伝説にそれこそ大量に現存する。

このコ・ウォンテ氏は飛車を研究する第一人者の人らしく、昨年の4月にもほとんど同様の文脈で取り上げられており、2ちゃんねるスレッドが残っている。

世界最初の飛行機は我が国の飛車であった。朝鮮の鄭平九(チョン・ピョング)という発明家が作った。
ライト兄弟の飛行機より300年も前に作ったのに、考証ができていなかっただけだ。

壬辰倭乱(訳注:文祿の役)の時、ある孤立した城で包囲された城主がこの飛車で救援されて30里(訳注:朝鮮10里≒日本1里)外に脱出したという。
それなのに、これについての研究がなされなかった事実が驚きだ。

飛車とはナルトゥル(訳注:「飛行機」の韓国固有語)を言うもので、我が国最初の飛行機の歴史であるわけだ。
白鳥やトキの形の翼と革で作った飛車に人を乗せて、空中に浮きあがって飛ぶことができた。

【韓国】歴史は蘇る 韓国ではライト兄弟より300年も前に飛行機が空を飛び交っていた!

これによると飛車は白鳥やトキの形の翼を持つとされており、本当に飛車が飛行機だったのかと言う疑問がふつふつとわいてくる。極めつけはその想像図で、先の記事に出ていた流線型のハングライダーのような面影はみじんもなくとても飛べそうにない。世界最初の飛行機の発明を主張するには根拠が薄弱な感は否めない。

ライト兄弟の初フライトは突然生まれたのではなく、その発明に至るまでの多くの先人による様々な努力の蓄積があったからこそ成功したのである。その時代について少し調べれば、ライト兄弟による飛行機の開発に至るまでの多くの技術開発、実験、理論構築の痕跡を発見することが出来る。飛行機という世界初の発明を生み出すだけの多くの技術的蓄積がなされ、それがある日とうとう閾値を超えて世界初の飛行機が実現したのだ。このように当時の技術レベルを見れば飛行機が発明される素地があったかということは大体推測できるはずだ。それが無いというのであれば、それは歴史的事実ではなくフィクションであると考えるべきだろう。

さて、このように自国を特別な国だと考え自尊心を満たす人はどこにでもいるようで、日本では竹内文書(たけうちもんじょ)が有名である。これによれば、ビッグバン以前の紀元前3175億年に上古初代天皇が即位しており、キリストの墓はなぜか青森県戸来村にあり、モーセの墓が石川県の宝達志水町にあるという。釈迦をはじめとする世界の大宗教教祖はすべて天皇の配下で、世界の中心は茨城県皇祖皇太神宮だそうだ。まあ、想像はほどほどに。