インターネットを携帯で利用する人は下流なのか?

LM-72007-03-02


FACTAが報じたパソコン見放す20代「下流」携帯族が話題になっている。ネットレイティングスによるデータクロニクル2006・ファクトシートによれば、過去6年間で20代のウェブ利用者の劇的な低下が観測されたという。2001年まで20代の構成比は20%を超えていたが、現在では約12%と半減しているという。これはウェブ利用が全年代に拡大したことに加えて、携帯電話による利用増も原因だと見られる。

年齢構成比の減少を根拠に『20代がPCを見放す』と結論づけることの不適切さは、はたしてPCは20代に見放されたのかで明確に示されているとおりで、調べてみると全くそんなことは無く、逆にPCからの利用は増加しているようだ。どうも件の記事は携帯からの利用を問題視する結論が先にある気がするが、その結論も疑問だらけだ。

FACTAは、インターネット利用を携帯ですませPCを扱えない若者層の増加を指摘し、それをデジタルデバイドに続くPC族と携帯族の第二のデバイドだと指摘した。

誰でも簡単にネットが利用できる携帯は、ネット利用の底辺を拡大する役割は果たしたかもしれないが、同時に「コンピューターに対する知識の欠如」や「キーボードで字を打てない」という、まるで高齢世代かと見紛うような退化を若い世代にもたらしはじめている。

退化と言われるとなにやらやばい気がするが、これは果たして憂慮すべき事態なのだろうか?

たしかにキーボードで字を入力できなければホワイトカラーの仕事では困るだろうが、キーボードぐらい就職してからいくらでも覚えることが出来るように思う。携帯電話搭載のフルブラウザGoogleにアクセスし検索を行い、Wikipediaを読み、価格.comで最安値を調べ、乗り換え案内で電車を調べ、Google Mapで目的地の地図を得る、このように携帯電話でインターネットを使いこなしている若者は、一昔前のPCなんかさわったことが無いようなおじさんと比べてずっとPCへの親和性が高いはずだ。

少なくとも彼らはインターネットをどう使えばいいかを知っている。どうすれば必要な情報が得られるか知っている。ただ、利用するツールがPCではなく携帯電話であるだけだ。PCに対する知識や習熟度は多少劣るかもしれないが、それらはそもそも難しいスキルではなく、すぐに身につけられる。そもそもキーボードでろくに字を打てないおじさんなんて世にごまんといるだろう。PCが使えると自認しているおじさんのPCスキルは、非常にささやかなものである場合が多い。携帯を使いこなす若者ならそんなレベルは楽々クリアできるだろう。

インターネットを利用する環境を有している限り、それをPCから使おうが、携帯電話から使おうが、得られるサービス、情報にはそれほど大きな違いはないし、フルブラウザの普及によりその差はどんどん小さくなってきている。PC族と携帯族と利用するツールの違いを新たなデバイドとするのは早計というものだ。少なくともデジタルデバイドが生む問題とは比較にならない。

インターネットに接続して生活している人と、インターネットと断絶して生活している人との間には、情報の入手性・得られる情報の多様性に大きな格差があることは確かだ。しかし、インターネットを利用できるのであれば、それがPCであっても携帯電話であってもかまわないはずだ。問題なのはそのツールの使い方であり、使い方がまずければいくらPCを使っていても、インターネットの恩恵を享受することは出来ないだろう。

何となく件の記事は、「携帯族=PCも買えない貧乏人=下流」という流れが透けて見える。普段の生活に必要のないPCを利用しなくて何が悪いのか。同じサービスが利用できるなら携帯で十分ではないか。PCなんてどうせ仕事で必要になればすぐに覚えられるって。