卑弥呼は「女王様とお呼び」と言ったのか?

産経新聞の報道によれば、東京都立高教諭が、日本史テストの問題文に性的行為を念頭に「私を女王さまとお呼び」など、不適切な言葉を書いていたことが分かり減給処分されたという。

都教委によると都立高教諭は5月25日、日本史の中間テストで、魏志倭人伝に出てくる卑弥呼を問う問題を出した際、「私を女王さまとお呼び」「私のヒールをおなめ」などと書いた問題文を出した。4月には芸能人の実名を出して、わいせつな内容を書いたプリントを生徒に配布したほか、日本史の授業で斬首やむち打ちなど不適切な挿絵や文言が書かれたプリントを配った。

産経ニュース

セクハラが社会問題となるこのご時世、教諭の処分も妥当と言えるだろうが、筆者の高校時代には日本史の授業で結構際どい内容が扱われたことを覚えている。多感な高校生には多少刺激的とも言えるが、あの日本史教師が何らかの処分を受けたという話は聞かない。

覚えているのは次のような話で、当然日本史の教科書にも大学入試にも関係が無い話題だが、妙に時間をかけて解説されたのを覚えている。古事記には「国産み」と呼ばれる、日本神話における日本列島の誕生過程が記されている。それによると、日本列島は伊邪那岐(イザナキ)と伊邪那美イザナミ)という二柱の兄妹神から生まれたとされている。古事記の該当箇所は次の通りだ。

ここにその妹伊邪那美命に問ひて、「汝が身は如何にか成れる」と曰りたまへば、「吾が身は、成り成りて、成り合はざる処一処あり」と答へたまひき。ここに伊邪那岐命詔りたまはく、「我が身は成り成りて、成り余れる処一処あり。かれ、この吾が身の成り余れる処をもちて、汝が身の成り合はざる処にさし塞ぎて、国土を生み成さむとおもふ。生むこといかに」とのりたまへば、伊邪那美命、「然善けむ」と答へたまひき。

これを現代語訳すると次の通りだ。

ここで、妹である伊邪那美命に「あなたの体はどのようにできていますか」問われれば、伊邪那美命は「私の体には、成長して、成長していないところ(女陰のことを示す)が1ヶ所あります」と答えられた。そこで、伊耶那岐命は、「私の体には、成長して、成長し過ぎたところ(男根のことを示す)が1ヶ所あります。そこで、この私の成長し過ぎたところで、あなたの成長していないところを刺して塞いで、国土を生みたいと思います。生むのはどうですか」とおっしゃったところ、伊邪那美命は「賛成いたします」と答えられた。

こうして2人はまぐはひを始めるわけだが、ここで女性である伊邪那美のほうが、先に男性の伊邪那岐を誘ったために、ちゃんとした子供が生まれなかった。その後、二神は天つ神のもとに赴き、どうするべきか訪ねた。そうすると女性の方から誘ったのが良くないとされ、今度は伊邪那岐から誘ってまぐはひを行い、結果として大八島を構成する島々(日本列島)を生み出したのである。

これが日本で最古の18禁な文章である。当時の日本史教諭は酷いことに該当箇所をある生徒に朗読させようと指名したが、当てられた彼は黙ってしまった(筆者は運良く当てられなかった)。今なら減給モノである。

そんなわけで、冒頭の都立校教諭も日本史を熱心に教えるあまり、ちょっと解説に熱が入っただけだ…と弁護を試みてみたが、いくら何でもヒールはないよな。はい、単なるセクハラおやじでした。