米バージニア工科大で銃乱射事件

LM-72007-04-17


既報のとおり、米バージニア工科大学で16日計32人が死亡、15人以上が負傷した銃乱射事件が発生した。容疑者は23歳の韓国人学生チョ・スンフィで、事件直後に頭を吹き飛ばして自殺しているため、動機など詳細は分かっていない。チョ容疑者は、英語を専攻し、大学内の寮に住んでいたという。

この事件は最初の殺人事件から2時間半後、大勢の警察官がキャンパス内を捜索する最中に起きるという非常に奇妙な経緯を辿った。タイムラインは次の通りである。

07:15 最初の事件発生。キャンパス南部の学生寮「ウェスト・アンブラー・ジョンストン」4階で学生の男女2人が撃たれて死亡
07:30 被害者の学生2人が大学近くの病院に運び込まれる
08:00 現場検証開始。大学では通常授業が始まる
08:25 大学側は学長ら幹部職員が会議を招集し、情報収集しながら学生への事件の伝達方法などを検討
09:26 大学はメールで学生に事件を知らせ、不審者に注意呼びかけ
09:45 キャンパス北部の教室棟「ノリス・ホール」に拳銃と大量の弾薬で武装した男が侵入。2階の教室などで発砲し、30人の学生・教員らが死亡、容疑者も自殺
09:55 大学側は学内放送とメールで、学生に教室内にとどまるよう呼びかけ
10:16 すべての授業を中止。大学が再びメールで同様の呼びかけ
10:52 大学の出入り口封鎖
12:15 大学側と警察が記者会見

大学構内で殺人事件が発生し、武装した犯人が逃亡しているにも関わらず、バージニア工科大では通常通り授業を行われており、事件発生当時9000人を超える学生や教員がキャンパスにいた。このことが被害を大きくしたことは明らかであり、もし仮に最初の事件の段階で危険性がしっかりと周知されており、キャンパス封鎖措置や待避指示などが出されていればと思わざるを得ない。大学側の危機管理の甘さが招いた惨劇である。最初の発砲事件に関する参考人の身柄が学外で確保されたことから警察や大学が油断したのではないかと報じられているように、大学側の対応にも致し方ない面があったとも言えるが、結果的にはこの判断が被害を拡大することとなったわけで、大学側の対応が非難されるのは避けられない。

目撃者の証言によれば、チョ容疑者は友人の女学生を捜しているようだったらしく、女子学生を1列に並ばせ、友人女性の所在を聞き出そうとしたらしい。その後無差別の発砲を始めたそうで、2階の窓から飛び降りて難を逃れた人もいたようだ。チョ容疑者は銃を乱射し無差別殺戮を行った後、頭を吹き飛ばして自殺、警察が現場に到着した時にはすでに死亡していた。

銃乱射事件が発生する毎にアメリカの銃社会が非難されることになる。キチガイに刃物という言葉が示すように、殺人衝動を持つような人間に武器を持たせてはならない。仮にもっと銃の入手が難しければ、今回のような事件は起こらなかったはずだ。銃規制に反対する銃擁護団体「全米ライフル協会」(NRA)などは、悪いのは銃を誤った方法で使う人間であり銃には罪はない、銃を所持することで自分の身を守ることが出来ると主張しているが、銃を規制することで凶悪犯罪への遭遇確率を減らす方が、銃を配布して自分の身を守る手段を手に入れるよりもずっと安全であるように思う。これを機に米国から銃を一掃するような施策を実行できれば、ブッシュは歴史に名を残す偉大な大統領となるだろうが、とてもそんなことは出来ないのだろう。

銃が流通していない安全な国日本に生まれて良かったと思ったら、長崎市長が銃撃され心肺停止に陥るという事件が発生した。日本も安全でなくなっていることは確かだが、それでも米国よりはましだと信じたいところだ。