宇宙葬:お父さんは星になって見守っているんだよ

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宇宙葬は、衛星ロケットに故人の遺骨を乗せ、地球軌道上に打ち上げるサービスである。記念誌やビデオ制作、遺族のためのセレモニーなどを含めて、費用は締めて105万円(税込)となっている。

遺骨は専用のカプセルに入れられて、直近の衛星ロケットに載せられて衛星軌道まで運ばれる。宇宙葬専用のロケットを打ち上げるのではなく、人工衛星を打ち上げるロケットに間借りする形となるので、費用は比較的安価に済む。このような間借りは大学などが制作するミニ衛星の打ち上げにおいても活用されており、それらミニ衛星の制作費は大体百数十万円、打ち上げ費用は300万円程度だ。

宇宙葬の基本サービスによれば、故人の遺骨を納める専用カプセルには遺骨が7g納められる。万が一の失敗に備えて、遺族は遺骨を2回分の14g預けることとなり、失敗した場合には2度目の打ち上げが利用できる。2度目以降も打ち上げが成功するまで何度でも契約は継続できるが、その場合には再度遺骨を用意する必要があるが、解約も可能で代金の9割が返還される。

専用カプセルには故人のことばや親族・友人達のメッセージを刻印することができ、同じ衛星ロケットに乗った人のプロファイルが納められた記念誌の発行、打ち上げから地球周回軌道への投入の様子を撮影したビデオの提供、打ち上げ後のセレモニーの開催、宇宙葬証明書の発行までサポートされる充実のサービスだ。

宇宙葬では今までに4回ロケットの打ち上げを行っており、計140名の人がこのサービスを利用している。日本人も計25名利用しているようだ。ロケットの打ち上げ費用、諸経費、サービス料を含めると、105万円という代金はそれほど高いわけでもなさそうだ。ただし、英語の出来る人は直接セレティス社に依頼すれば費用は4,995ドルで済む。日本代理店を通すことで費用が倍ほどになっている計算だ。また、遺骨の重量も7gでなく1gでいいなら、1,295ドルというかなりリーズナブルな値段となる。

衛星軌道上に打ち上げられたカプセルは衛星軌道上を半年から250年ほど周回することとなり、最後は大気圏に突入して燃え尽きる。大気圏突入時には、故人の流れ星が見えるかも知れない*1宇宙葬を提供するセレティス社はより細かなオプションを提供しており、低軌道に打ち上げられた後、地球に戻ってきたロケットを回収するEarth-Return Serviceは495ドルから、地球周回軌道に打ち上げるEarth Orbit Serviceは1,295ドルから、月まで行くLuna Serviceは12,500ドルから、深宇宙まで進むVoyager Serviceは12,500ドルから提供されている。短期間で燃え尽きるのが嫌な人は、Voyager Serviceを利用すれば永遠に宇宙を彷徨うことができるのだ。

文字通り星となれるこのサービス、打ち上げ1度当たりのカプセル搭載数を増やせば、よりリーズナブルな価格で提供することが出来ることから、将来的には一般的なサービスとなるかも知れない。豪勢な葬式を出してもらうぐらいなら、宇宙葬で遺骨を打ち上げてもらった方が喜びそうな人は大勢いそうだが、死んだ後に打ち上げられても本人には分からないし、費用を払う遺族は故人のロマンを共有しているわけではないところが、まだまだ高いサービス料とともに利用者数があまり伸びない原因だろうか。

死後、星になりたいですか?

*1:実際には何らかの工夫をしなければ、専用カプセルの大きさからみて地球からその流れ星を観測するのは難しそうだ。形状や材質を工夫すれば重量を増加させずに大気圏突入時に燃え尽きるまでの時間を延ばし、明るさを倍加させることができるのだろうか