韓国メーカーが韓国から撤退せざるを得ない理由

経営者倶楽部:韓国から逃げ出す韓国メーカーでは現在韓国の抱える深い病巣が紹介されている。

その朝、ウルサンにある同社の第3工場に案内されたのですが、日本メーカーの最先端工場の様子をよく知っている私たちからすれば、目を疑うような光景がそこにはあったのです。ラインで働いている従業員は、ちょこっと動いて部品を付けると、すぐ椅子に座ってしまう。そして、しばらくするとまた部品を付け、また休憩。5分働いて5分休む、といったパターンの作業も見かけました。休みの間は携帯電話で遊んだりしていて、かなり暇そうです。正社員だけでなく、派遣社員も同じ。労働組合の力が強いお陰で休憩時間が確保され、しかも「自分の決えられた作業以外は、何もするべきではない」というルールが厳格に守られているのです。

http://nvc.nikkeibp.co.jp/free/COLUMN/20070523/108041/

これがヒュンダイの効率問題として知られる問題の一角だという。妥協しない韓国の労働組合と、その組合を納得させられない経営陣のため、こうした歪な関係が生まれ、結果として企業の労働力を奪っているのだ。

最近、韓国のもう一つの大手、サムスン電子が国内の携帯電話機工場を閉鎖、ベトナムに移ることにしたと発表しました。その方が、コスト的にメリットがあるから行くというより、柔軟性のある労働条件を求めてこの国から逃げ出すのだといいます

http://nvc.nikkeibp.co.jp/free/COLUMN/20070523/108041/

このような柔軟性のない労働条件を嫌って、韓国企業は韓国の外に工場の移転を始めているという。韓国企業が韓国から撤退を始めたのだ。おそらく韓国教育の賜だと思うが、韓国人は自分の考えをはっきりと主張する傾向がある。この傾向が労働組合という環境において増幅され、力を持ちすぎたことがこのような状況の原因となっているのだろう。このままの状態が続けば、韓国から有力な韓国企業がなくなるという、前代未聞の空洞化が進行してもおかしくない。

韓国の労働争議の苛烈さは大きな社会問題となっている。大和総研は、物流部門のストライキが韓国経済に悪影響を及ぼす事を懸念している。2005年末の大韓航空パイロット労働組合ストライキでは旅客機の72%、貨物機の90%が欠航したという。このような甚大な影響を及ぼすストライキに関しては、韓国政府は緊急調整権を発動し早期の沈静化を図る。緊急調整権が発動されると争議行動は禁止され交渉のテーブルに強制的に着かされるのだが、この調整権の発動が増加傾向にあるという。言うまでもなく、韓国は輸出国家であり、物流部門がストライキにはいると、自動車や半導体などの輸出活動に大きな影響を及ぼす。輸出の主力である半導体や携帯電話の多くは、航空便を使って輸出しており、航空貨物が輸出全体額に占める割合は3割を超えるというが、これが止まると韓国国内のみならず、世界的な混乱を引き起こすことになる。それが分かっていても、ストライキは止められないのだ。

2005年の韓国アシアナ航空ストライキにおける要求は日本人から見れば唖然とするものだった。

  • 「海外出張の時、ホテルにゴルフセットを4セットを常備してくれ」
  • 「フライト前の薬物ドーピング検査及び飲酒検査をするな」
  • 「外国滞在中の操縦士の家族に無料航空券を提供しろ」

さすがにこのような要求は韓国国内でも「操縦士労組、過度な利己主義」(国際新聞)、「大企業労組はやり過ぎだ」(韓国経済)、「操縦士労組は貴族労組」(韓国日報)、「労働者なのか、貴族なのか」(朝鮮日報)、「操縦士の休息はゴルフクラブと無料航空券をもらって」(朝鮮日報)、「本当にまともな精神状態でしているのか」(韓国経済)、「ベンツに乗って、暮せないとストライキをするのか」(ヘラルド経済)等と問題視されたが、実際には核心要求でない部分を意図的に強調し、世論の反発を得て、交渉を優位に進めようとするアシアナ航空側の情報操作であったようだ。改めて見てみると、労働組合側の要求の核心は、飛行安全に結びつくものが多く、決して利己的な要求ばかりをしていたワケではないことが分かるが、25日間もストライキを継続する必要があったのかどうか(最後は政府による強制的な緊急調停)。

このように韓国における労使関係は、妥協しない労働組合によって極めて難しい状態にある。より柔軟で常識的な労働条件を求めて韓国から撤退する企業が続出してもおかしくはない。韓国全体の国益を考えた労使の前向きな対話が必要だと思うが、もう一度韓国経済が崩壊するような、こんな事をやっていたのでは駄目だと気づかされるような出来事が無いと改善されない気もする。