韓国イージス艦 vs 航空自衛隊

LM-72007-05-27


韓国は25日、「夢の戦闘艦」であるイージス艦KD-IIIの一番艦世宗大王(セジョンデワン)を進水したイージス艦の導入は米国、日本、スペイン、ノルウェーに続き5番目である。

海上自衛隊は今年3月に最新イージス艦あたご型護衛艦を導入しているが、あたご型と比較すると、世宗大王は司令部機能を有し、ハリネズミのように近接防衛装備を満載した重武装艦となっている。イージスシステムのベースラインはあたごと同じく、最新の7だが、対潜システムや慣性航法装置など一部の機能が省略されている。

韓国の軍事マニアらがイージス艦と日本のF-22の仮想戦闘シミュレーションを行った結果が、痛いニュースで紹介されている。結果はF-22ラプター20機を殲滅となっているのだが、ツッコミどころ満載である。

シミュレーションの状況を要約すると次の通りだ。

  1. 2015年末。米国議会によるF-22海外禁輸措置が解除され、日本がF-22を100機導入する第一歩として、20機の1個飛行隊を導入した。
  2. 韓国は世宗大王艦を含む計3隻のイージス艦を実戦配備。
  3. 日本がF-22の性能試験のため、1個飛行隊で武力示威行動を行った。
  4. 竹島周辺の日本海を航行中の世宗大王艦のイージスレーダーSPY-1Dが、イージス艦前方60〜70kmに接近してきたF-22を感知。
  5. 世宗大王艦はF-22飛行隊を識別と同時に艦対空ミサイルSM-2ブロックIIIBを発射。撃破に成功した。

以下気になったところを列挙してみる。

日本がF-22を100機も導入

日本のF-22導入に関しては何度か取り上げてきたが、対日輸出許可が下りるかどうか予断を許さない。また、導入できるとしても1機200億円とも言われるF-22を100機導入なんて日本の財政事情が許すとは思えない。防衛予算の対GNP比が欧米諸国並みに増加したとしても難しいだろう。そもそも現時点におけるアメリカの導入予定数が183機なのに、日本が100機導入?

日本のイージス艦はどこへ?

韓国は2008年の世宗大王の実戦配備に続いて、2010年に2番艦、2012年に3番艦を配備予定である。そのため、2015年おいて韓国が3隻のイージス艦を配備しているという設定は、韓国経済も北朝鮮も崩壊せず導入が予定通り進めば妥当と言える。しかし、日本側に目を転じてみると、2015年だと海上自衛隊にはこんごう型護衛艦4隻、あたご型護衛艦2隻の計6隻のイージス艦が実戦配備されているはずだ(ついでに13500トン型護衛艦も2隻)。単純にイージス艦だけの配備数を比べても、倍の戦力差があるわけだが、今回のシミュレーションには何故か日本のイージス艦は出てこない。これらの艦はいったいどこで何をしているのだろうか。

日本の領空内を飛行中のF-22を問答無用で撃破

日本はF-22の性能試験を行っているとの設定のようだ。竹島周辺を警戒中の韓国イージス艦が前方60〜70kmを飛行中のF-22を察知、艦対空ミサイルによりこれを撃破とある。右図は竹島周辺海域を示したものだが、竹島から本土までわずか220kmしか離れておらず、竹島周辺を航行中の韓国イージス艦の前方60〜70kmはおそらく日本の領空である。日本の領空を飛行中の日本の航空機を、発見後即撃墜とは一体いかなる状況なのか。既に戦争状態なのか。

なぜか攻撃機F-2ではなくF-22

シミュレーションでは、イージス艦のレーダーが60〜70km離れたF-22を察知できるのに対し、F-22のレーダーは40kmしかとどかない事が勝敗を分けた要因とされているが、そもそもなぜ対艦攻撃を攻撃機F-2ではなくて航空支配戦闘機のF-22でやらねばならないのか謎である。2015年時点でも対艦攻撃はF-2の主要任務である。F-2は空対艦誘導弾であるASM-2を4発搭載することができ、170km先からの攻撃が可能だ。偵察衛星などの情報により、韓国イージス艦は出港時から24時間態勢で居場所を追跡されているはずであり、攻撃機が敵軍のイージス艦の前方に無防備で出て行くなどあり得ない。自衛隊の航空機に対しては、日本の領空においては確実に早期警戒管制機E-767BADGEシステムによる航空管制が行われ、最適な攻撃ポイント・タイミングへの指示・誘導がなされる。イージスシステムの同時対応ミサイル数は15発とされているが、複数のF-2によるミサイル飽和攻撃を受けてイージス艦が無傷ということは考えにくい。

このように問題だらけのシミュレーションなのだが、従来圧倒的な戦力差を誇っていた自衛隊の優位性が近年の韓国の軍備増強によって薄れていることもまた事実である。韓国が導入した世宗大王艦の最大1,054kmの探知追跡距離、最大925kmの弾道ミサイル追跡距離、900個の目標物の同時追跡能力、15発のミサイル同時対応能力、17発の航空機同時対応能力に加え、500km以上の射程を持つ艦対地ミサイルなどは極めて強力であり、仮に日韓両国が交戦状態に入った場合、自衛隊が対処に手を焼くことになるのは間違いない。韓国に仮想敵国と認識されている日本としては憂慮すべき事態である。