ナントカ還元水の松岡農水相自殺

LM-72007-05-28


既報のとおり28日正午過ぎ、松岡農相衆院赤坂議員宿舎内の自室で首をつって自殺しているのを秘書が発見し、搬送先の病院で死亡が確認された。享年62歳。衆議院議員6選、昨年9月の安倍内閣発足時より農相に就任していた。

松岡農相と言えば、ナントカ還元水が有名で、困ったことにこれ以外のエピソードを思いつかない。松岡氏は光熱費や水道代がかからない議員会館にしか事務所をかまえていないのにもかかわらず、政治資金収支報告書に光熱費を01年〜05年の5年間で計2,880万円計上していることが問題視されていた。

本件の追求に対し、松岡氏は「水道はナントカ還元水とかをつけている」答弁したことが問題をややこしくした。

1年あたり500万円もかかるナントカ還元水とは一体何なのか。livedoorニュースによれば日刊ゲンダイ朝日新聞が松岡氏の事務所を直撃取材したもののナントカ還元水」を精製する浄水器などは発見できなかったという。そもそも浄水器の相場は20〜30万円。あらゆる蛇口に取り付けたところでたかが知れている。

日刊ゲンダイナノクラスターGeルルド水1200という1本5,000円以上するミネラルウォーターナントカ還元水の正体なのではないかと報じたが、顧客名簿に松岡氏の名前はないという。それにしても1本5,000円のミネラルウォーターなんて誰が飲むのだろうか。

わざわざ検証しなくても客観的に見えれば、ナントカ還元水なんていうものは口から出任せのようにしか見えず、松岡農相がのらりくらりと不貞不貞しい答弁を繰り返すたびに安倍内閣の支持率が下がるという状況になっていた。

そして今回の自殺となったわけだが、遺書が用意されていたと言うから、相当に追い詰められていたのだろう。官製談合で刑事事件に発展した農水省所管の独立行政法人・緑資源機構の関連団体から献金を受けていたことが発覚したことも原因の一つだろう。以前から何かと政治とカネの疑惑が絶えない人だったようだ。

個人的にはナントカ還元水のイメージしか無かった松岡氏だが、朝日新聞はWTO交渉への影響を懸念を報じている。協議が正念場を迎えているWTOの多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)や農政改革などに影響が懸念され、有力な農林族議員の一人として存在感を発揮してきた松岡氏を失い、農水省は衝撃を受けているという。

 農水省が抱える課題のうち最も大きいのは、年内の最終合意を目指しているドーハ・ラウンドだ。松岡氏とともに、WTO交渉に臨んできた甘利経済産業相も「(松岡氏は)大事なパートナーで、極めて有能な農業担当大臣。非常に残念だ」と動揺を隠さなかった。

 松岡氏は、農水相就任前から農林族議員の立場でWTO交渉にかかわってきた。農水省幹部は「知識も経験もあり、各国の閣僚と渡り合える松岡大臣を失った痛手は大きい」という。

 同省の別の幹部は「交渉力よりも、松岡氏が期待されたのは農林族議員としての存在感だった」と語る。政治とカネをめぐる問題が国会で追及されても、安倍首相が松岡氏を守ったのは、「WTO交渉が日本に不利な条件で妥結した場合、反発する農協を抑えられるのは、松岡氏のほかにいないからだ」と説明する。

asahi.com:正念場のWTO交渉に影響も 農水族重鎮の松岡氏自殺で - 松岡農水相自殺

このままWTOが妥結すれば、日本の農業分野に深刻な打撃が出るのは避けられず、その際の国内の反発を抑えることができる松岡氏は、参院選を控えた安倍政権のキーマンだったようだ。金に汚い卑しい政治家という印象しか無かったのだが、仕事は出来る有能な人物だったらしい。その点では日本に取って多大な損失だろうし、もっと他の道はなかったのかと残念に思う。ともかく、これからの痛みを伴う農業改革を断行できる有能な人材が後を継ぐことを期待したい。せっかく有能だったのに、ナントカ還元水でか国民に記名されない大臣ほどむなしいものはない。