社会保険庁解体(パトレイバー2バージョン)

LM-72007-07-01


社会保険庁改革関連法案と年金時効撤廃特例法案が国会で成立し、5,000万件にも上る年金記録を宙に浮かしたまま10年以上も放置した社会保険庁を解体し、職員を非公務員化する公法人を新設して出直しを図ることが決まった。「手を抜くのが当たり前の職場。解体されても仕方がない」との職員の証言もあり、民間企業では考えられないような雑な管理しかなされていなかったようだ。国民の財産を預かる仕事をしていると言う認識が根本的に欠けていたように思われる。

なんかぴったりなので、機動警察パトレイバー2 the Movieより、特車二課棟壊滅前後の警視庁会議室の会話から。BGMはOut Breakで。

所長:「早朝にも関わらず全幹部職員を緊急召集したのは他でもない。現今の情勢下に社会保険庁としてその任務を全うするにあたっていかなる方針で臨むべきか。それを討議する為である。状況が状況であるので今日は特に社会保険庁長官の列席をお願いした。が、その前に、今朝未明年金記録問題検証委員会に対し相談管理課長代理名をもって参集要請がなされた。南雲君。これは一体どういうことか」

南雲:「その前にここにお集まりの方々に申し上げたい」

所長:「君の意見等を求めてはおらん。社会保険業務センター所長である私の承諾も得ず、これは全くの越権行為だ。君の行なったことは社会保険庁内部の秩序を乱し、延いては社会に無用の混乱を招く軽率な行動だったとは思わんのか」

南雲:「では確たる根拠も具体的な計画もなしに行なわれた国民への年金安心宣言は、軽率ではなかったのか。今回の非常事態を招いたそもそもの原因は、基礎年金番号の導入時から、システム統合における名寄せの問題を放置し、その解決にむけた努力を行おうともしなかった社保庁の機能不全にあることは、ここにいる全員が承知の筈です」

所長:「貴様っ!」

長官:「南雲君。社保庁内部に一種の組織的問題があったとする君の発言は聞き捨てならんが、我々が一切何も対策をしてこなかったというのかね」

南雲:「ご自分の胸に聞かれてはいかがですか」

(後藤の携帯電話に着信。席を立つ後藤)
後藤:「ちょっと失礼します」

所長:「あっ、こら」

長官:「放っておきたまえ」

(電話口で松井)
松井:「後藤さん? ああ、やられちまったよ。それより15分程前だが、野党の先生方が3人ほど飛んでっちまったぜ。ああ。あ? よし分かった」

南雲:「国会対策を楯に要らざるマスコミリークを繰り返して徒に国民の危機感を煽り、事態をここまで悪化させた責任を誰がどのように取るのか。部内の秩序を論じるならまずそのことを明らかにして頂きたい」

長官:「与党内部には社保庁関係者も多数いることを知らん訳ではあるまい。事は既に政治の舞台に移されている。今は国民を刺激することなく、その行動において協調を図り事態の沈静化策を模索すべき時だ」

南雲:「その為にも社保庁上層部がその責任を明確にし自らの非を世間に正されてはいかがです」

長官:「この日本には我々公務員だけが存在する訳ではない。この状況が長引くと万に一つとはいえ社保庁解体の動きがでることもなる。警察の介入すらあり得る」

長官:「年金を預かる社保庁が自らの失態を認めるがごとき行動は徒に社会の不安を増長させることにもなる」

南雲:「この期に及んでもまだそのような妄言を。あなた方はそれでも公務員か!」

長官:「国民年金をここまで育て上げた功労者の一人と思えばこそ大目に見てきたが、その暴言は最早許せん。南雲君。相談管理課長代理および相談業務課長の任を解き別命あるまでその身柄を拘束する」

南雲:「私に手を触れるな!」

長官:「後藤君。君はどう思うかね」

後藤:「民間から遠退くと楽観主義が現実に取って代る。そして最高意志決定の場では、現実なるものはしばしば存在しない。組織解体の危機に瀕している時は特にそうだ」

長官:「何の話だ。少なくともまだ解体など始まってはおらん」

後藤:「始まってますよとっくに! 気付くのが遅過ぎた。民主党がこの問題を掘り起こす前、いやその遥か以前から解体は始まっていたんだ」

後藤:「突然ですがあなた方には愛想が尽き果てました。自分も南雲課長と行動を共に致します」

長官:「後藤君。君はもう少し利口な男だと思っていたがな」

所長:「二人とも連れて行け」

(あわてて一人の男が入室し報告する)
「報告っ、たった今参議院社会保険庁改革関連法案が成立し、社保庁の解体が決まりましたっ」

後藤:「だから! 遅過ぎたと言ってるんだ!」