マイクロソフトがXbox360の欠陥に11億ドル払う羽目になったワケ

RRoD (Andrew Burgess)


既報の通り、マイクロソフトXbox360に欠陥が見つかったとして無償修理を実施すると発表した。修理にかかる費用は約10億5000万〜11億5000万ドル(約1290〜1410億円)が見込まれており、まさに家庭用ゲーム機史上空前の不具合である。

ちょうど一週間ほど前にはGIGAZINEXboxの故障率がおよそ33%にも上るというDailyTechの記事を紹介していて、そのときにはいくら何でも量産して世界中で販売している商品の不良率が3割もあるなんて大げさだろうと思っていたのだが、大げさでも何でもなく真実だったようだ。

XBoxの故障の原因に関してはAndo's Microprocessor Informationに詳細な解説がなされている。それによれば、この故障はXBox360のリング上の3つの赤いLEDが点灯して故障を知らせるので、Red Ring of Death (RRoD)と呼ばれている(右写真)。

マイクロソフトの対策費見込額の11億ドルをこのRRoDの修理にかかる140ドルで割ると故障見積数は786万台。累計出荷数は1160万台なので、故障率はなんと67.7%にも上る。2/3の故障率は尋常ではない。

故障の原因としてあげ得られているのはマザーボードの半田不良だが、XBox360は発熱量が凄まじい上に放熱対策が不十分なので、内部の熱によって半田が割れるSolder Crackが原因ではないかと推測されている。Xbox 360ハードウェアレポートに掲載されているマザーボード写真を見ると非常に複雑な基盤となっており、半田付けされている箇所は何千カ所とある。CPUなどの熱源の近くに耐熱性の低いコンデンサが林立している上、エアフローの考慮もあまりされていないようで、熱対策が未熟であることを疑わせる。

仮に半田不良が原因である場合、断線した一カ所のみを修理したところで、根本的な対策をしなければすぐに他の箇所や同じところが同様の故障を起こす。根本的な対策のためには、CPUのプロセスルールを変更して熱の発生量を抑え、マザーボードをCPU、GPUごと総て入れ替えて不良半田箇所を排除し、筐体のエアフローを改善し、廃熱機構を改良しなければならない。すなわち、中身の総入れかえということだ。筐体設計の自由度を考えれば、この際0から設計し直した方が良いかも知れない。

結論としては設計ミスという線が濃厚なのだが、マイクロソフトは基本的にはソフトウェア会社なので、Xbox360のハードウェア設計は中国か台湾のメーカーに委託していたのだろう。彼らは放熱対策などのノウハウの蓄積が不十分であり、このような故障が頻発することを予見できなかったに違いない。その点、ハードウェアの設計においてはまだソニーなどの国内メーカーに一日の長があるようだ。

RRoDに関して三年間無償修理するということだが、時間が経つと故障するのは目に見えているので、無償修理期限が近づいてきたら過酷な環境で連続稼働させてわざと故障させる方が賢い気がする。既出荷分の1160万台が総て故障修理で戻ってきたら、費用は11億ドルでは済まないだろうが、さて。