プロフィールからして嘘だらけの米超能力者

スポーツ報知が報じたところによれば、お笑いコンビ「麒麟」の田村裕の父親で行方不明だったAさんが米超能力者の透視によって発見されたという。この米超能力者は例によってジョー・マクモニーグルで、米バージニア州の自宅から遠隔透視で場所を特定したという。

 同氏は8月上旬、バージニア州の自宅から氏名、生年月日だけを頼りに遠隔透視。「生きている」と断言。「かなりほおのこけた感じ…病気をしているかもしれない」といい、現住所の地名は「ナンバ」か「ナーバ」で、駅と思われるイラストを書いた。

 スタッフが帰国後、大阪で捜索を開始。しかし、イラストの場所は空き地で発見はできず。そこで、イラストの象徴的な建物を手がかりに住宅密集地をいくつかピックアップし、再度調査したところ、アパートの表札を見つけたという。

 今月の番組収録で田村本人に報告。その後、田村と兄、姉が直接家を訪ね、父親と再会した。田村は「もう会えないかもと半分あきらめていた。見つかったと言われた時は、余りの驚きに脳が全くついていかずリアクションが取れなかった。これから親孝行できるかと思うとうれしくて仕方ない」と喜んでいる。この模様は25日午後9時から日テレ「FBI超能力捜査官 第12弾」で放送される。

http://hochi.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20070925-OHT1T00046.htm

はあ(嘆息)、こんな低俗な番組を垂れ流すから、真偽の区別がつけられない未熟な中高生が超能力を信じてしまうのだ。ジョー・マクモニーグルの超能力透視は、2007年6月11日付エントリ『スタッフの多大な努力によって支えられている超能力捜査番組』に示したように、番組が雇った探偵の調査能力と、曖昧模糊としたマクモニーグルの透視を何とか当たったように見せかける番組スタッフの涙ぐましい努力によって支えられているのである。そもそも今回だって、透視の場所には父親は見つかっていない。父親の住所は探偵が発見し、後付でその住所を透視結果と結びつけているだけに過ぎない。

そもそも記事に示されているプロフィールからして嘘だらけだ。引用すると次のようになる。

◆ジョー・マクモニーグル氏 1946年1月10日、フロリダ州マイアミ生まれ。61歳。米政府の秘密超能力スパイ計画「スターゲートプロジェクト」の元メンバー。79年にイランで起きたアメリカ大使館占拠事件にて大使館内部を透視。人質がどの部屋に何人捕われているのか、武装した兵士の配置、庭に設置された地雷の位置まで正確に言い当てた。NATO軍ドジャー将軍誘拐事件で犯人の潜伏場所を当て、将軍救出を導いた。

http://hochi.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20070925-OHT1T00046.htm

これについては、『超能力番組を10倍楽しむ本』において詳細な分析がなされている。以下にその要旨を示す。

スターゲートプロジェクト

スターゲートプロジェクトは1977年に開始され1994年まで2000万ドル以上を費やしたとされる、アメリカ陸軍の超能力の軍事応用を目指したプロジェクトである。同プロジェクトにマクモニーグルが被験者として参加していたことは事実であるが、同プロジェクトは1994年に満足な成果が得られないまま終結している。同プロジェクトにおける彼の超能力に関する逸話は、彼の自伝を唯一の根拠とするものであり、第三者の検証を経たものではない。さらに、TV番組で流される再現フィルムは、彼の自伝と読み比べても矛盾したり、誇張したり、まったくの捏造だったりと、とても信用に足るものではない。気になる人は、彼の自伝『FBI超能力捜査官 ジョー・マクモニーグル』を読んで、当該箇所を比べてみると良いだろう。

アメリカ大使館占拠事件

1979年のアメリカ大使館占拠事件ではデルタフォースによる救出作戦が計画されたが、トラブルが続出し大使館にたどり着くことさえ出来ずに、作戦は失敗している。結局、事件発生から444日後、イラン政府によって人質が解放されるが、このプロセスにマクモニーグルは一切関与していない。自伝内で彼は透視を行ったとしているが、そこで、地雷の位置を透視したとは一言も書いていない。なぜ彼の手柄になっているのか不明である。

NATO軍ドジャー将軍誘拐事件

正式には将軍でなく、ドジャー准将だが、マクモニーグルは自伝内で透視を行ったとしているが、同時に「私の提供した情報はイタリアに送られることはなかった」と記している。情報が提供されなかったのだから、それに基づいて准将が救出されることなどあり得ない。准将救出に彼が一切貢献していないことは、彼の自伝からも明らかである

嘘で固められた詐欺師

このように彼の経歴自体、彼の自己申告に過ぎないし、彼の自己申告からも大きく誇張されていることがわかる。経歴に真っ先に書かれるべき、FBI超能力捜査官という経歴が触れられていないのは、それが全くの捏造だからである。彼の自伝のどこにもFBI捜査官という話は出てこない。唯一の例外は彼の自伝の邦題「FBI超能力捜査官 ジョー・マクモニーグル」だが、これは日本の出版社が本を売るためにつけたものに過ぎない。こんな履歴書が嘘で固められている人物の話をありがたがって聞くほどばからしいことはない。