完全試合よりも勝利を優先した落合監督の判断

既に語り尽くされた話題だが、中日が3勝1敗と日本一に大手を掛けた第5戦、1-0とリードした9回の場面で、中日の落合監督は、日本シリーズ史上初の完全試合まであと3人だった山井を交代させた。試合は後続の岩瀬が完全試合を引き継ぎ、日本シリーズ史上初めて継投で完全試合を達成した。

落合監督への批判として代表的なのは、日本シリーズの優勝なんて毎年1回はどこかのチームが達成しているのに、何十年に1度あるか無いかという完全試合の達成を放棄したのは許せないというものである。確かに多くのファンが完全試合という偉業達成の瞬間を期待していたことは間違いない。その期待を交代という形で裏切られるとは思っていなかったのだろう。

中日スポーツ:落合監督激白「完全試合オレだって見たかった」によれば、山井の右手にマメができ、故障に繋がりかねない続投を回避したという面もあったようだ。

状況を整理してみよう。

采配 9回攻防 優勝の行方 評価 コメント
山井続投 完全試合達成 中日優勝 A+ 完全試合で優勝なんて史上最高の監督だ
山井続投 ヒットを打たれるものの、無失点 中日優勝 A 完全試合は惜しかったけど優勝おめでとう
山井続投 逆転 中日優勝持越 B+ 完全試合は残念だった。次の試合で勝てばOK。
山井交代 継投による完全試合 中日優勝 B- 優勝はしたが、なんで山井を交代させるんだ?
山井交代 ヒットを打たれるものの、無失点 中日優勝 C 勝ったけど、山井に投げさせておけば、完全試合だったかも知れないのに
山井交代 逆転 中日優勝持越 C- 完全試合も勝利も駄目にして最悪。監督クビにしろ!

整理するまでもなく、落合監督への評価という点では続投させた方が明らかに期待値が高くなりそうだ。批判を恐れるのならば、この試合を落とすリスクを考慮しても、とりあえず山井を継投させておいた方が良い。継投させて逆転負けを喫したとしても、完全試合へのチャレンジのためだったとすればファンも納得するだろう。そんなことは落合監督自身百も承知で、それでも敢えて山井を交代させたのである。この決断はなかなかできることではない。

采配の是非は筆者には判断できないが、この采配を決断した、その一点だけでも落合監督はたいした人物だと思う。