いきなり5人を強制退去にした新入国審査

20日より16歳以上の外国人に指紋、顔写真の提供を義務づける新入国審査が始まった。産経新聞が報じたところによれば、運用初日に計5人の指紋が、過去に強制退去となって来日が許可されていない人物のデータベースと一致し、強制退去処分となったようだ。

5人中3人は偽造・変造パスポートを利用していたようで、指紋採集が水際における入国阻止に役だった可能性が高い。もちろん、従来通りの審査でもこの5人を識別することができたかも知れないが、より精度の高いスクリーニングができるのは間違いないだろう。

一方でこのシステムの導入には日弁連などから「偏見や差別を助長する」といった懸念の声が上がっている。中国新聞は「新たな外国人差別」だと主張する在住者の反発を伝えている。たしかに、犯罪者扱いされて指紋を採られて憤る気持ちはもっともだし、筆者も米国に入国する際の長蛇の列に辟易したものだ。

それでも、工作員やテロリスト、犯罪者などの入国をコントロールすることは日本の安全保障上必要不可欠だ。その目的に指紋・顔写真の提供が有効に機能することは、導入初日に5人もの強制退去者を同定したことからも明らかだろう。

平成18年版犯罪白書によれば、平成17年における来日外国人による一般刑法犯の検挙件数は3万3,037件(前年比3.0%増)と過去最多となっている。また、特別法犯の送致件数は1万4,828件(前年比1.4%減)、送致人員は1万2,673人(同2.1%減)であり、いずれも過去最多となった前年と比べてやや減少したものの、高いレベルを保っている。国籍等別構成比を見ると、中国が40.2%と最も高く、次いで、韓国・朝鮮(12.6%)、フィリピン(8.0%)、ブラジル(6.0%)、タイ(3.8%)の順となっている。

最近世間を賑わせているプロの外国人窃盗団も、入国時に指紋採取を行っておけばその活動をかなり制限させることができるだろう。今までは強制退去にしても偽装パスポートで何度でも再入国し犯罪を繰り返すという状況があったが、指紋提供が義務化されれば再入国を阻止できるはずだ。某国の工作員ともなれば、公式のパスポートを何枚でも用意できるわけで、そうした危険人物の特定にも指紋採取は役に立つだろう。いくら本物のパスポートでも、データベース上に一致する指紋が登録されていれば、危険人物としてマークすることができる。

一部の犯罪者のために、大多数の善良な人々が不快な思いをするのは残念なことだが、善良な人々の安全を確保するためにも、入国審査の厳格化は必要なことだろう。あとやるとしたらDNAの提供だが、それはさすがにね。