任天堂が考えるダイエット

12月1日に発売になったWii Fitだが、筆者が所属している職場にも早速本日から導入された。会社の経費で購入したのか、誰かの私物なのかは不明だが、大画面テレビの前にWiiボードが置いてあっても、誰も咎めないそんな職場である。ちなみにPS3XBOX 360Apple TVもフロアのどこかにはある。使われているのはあまり見たことがないが。

Wiiフィット (「バランスWiiボード」同梱)

Wiiフィット (「バランスWiiボード」同梱)

昼休みになると、誰かがWiiボードの上でくねくねと踊っている様は一種異様だが、日本中どこの職場でも見られる日常的な風景だろう(いや、違う)。導入初日となる本日には人だかりができて、みんなが興味深くその様子を眺めていた。

1998年に発売されたコナミDance Dance Revolutionによって、ゲームの要素を加えることによって楽しくエクササイズできることが実証され、一大ブームを巻き起こした。DDRの後のバージョンには消費カロリーを記録するダイエットモードが搭載され、後年にはフィットネスに特化したエアロビクスレボリューションが発売されている。DDRの余勢を駆って、コナミはフィットネスクラブ、エグザス(X∀X)を展開するピープルを買収、コナミスポーツ&ライフを設立し、着々と健康分野への進出を図っている。

Wii Fitはその任天堂版とも言えるが、脳トレで培った続けさせる仕組みを随所に導入している。

  1. 現状の可視化
    Wii Fitでは最初に「からだ測定」を行うことによって、体重やBMI等の測定を行う。Wiiボードには圧力センサが4点に設置されており、ボードにかかる荷重を計測することができる。これにより体重やその移動などを測定できるわけだが、ユーザの分身となるアバタは体重を反映して、太ったり痩せたりする。太った不格好なアバタが出ると、痩せなければとの想いを強くすることになる。現状を上手く可視化した好例だろう。
  2. 現状の定量
    「からだ測定」のバランス測定ではバランス年齢が呈示される。実年齢よりも大きな値が出ると、実年齢までは下げようとする強いモチベーションが生まれる。脳年齢やバランス年齢など、年齢というわかりやすい指標に置き換えて定量化することは、モチベーションを誘起する上で非常に有効だ。
  3. 目標値による進捗管理
    続いて、ダイエットの目標体重及び達成時期の設定を行う。あまりに無茶な目標を立てると、リバウンドの可能性を警告される。短期的なマイルストンをおいて、進捗管理を行うことは非常に理に適っている。BMIの推移はグラフで表示されるので、目標に対する進捗率が一目瞭然となり、モチベーションの維持に一役買っている。
  4. トレーナーによる指導
    今年大ヒットしたビリーズブートキャンプだが、その魅力の一つにビリーの「ワンモアセッ」というかけ声があったことに異論はないだろう。Wii Fitでもトレーナーがつき、いろいろ怒られたり、励まされたりしてトレーニングを続けることができる。Wiiボードが関知する体重移動によってさぼっているとトレーナーにばれて、しかられる訳だ。Wii Fitのガイド役となるウィーボは、起動間隔が開くと「○日ぶりデスね。がんばって、毎日つづけマショウ!」等とイロイロ世話を焼いてくれる。こうしたトレーナーとのインタラクションは、続けようとの気力を回復してくれる。
  5. インセンティブの授与
    がんばった人にはご褒美が与えられる。細かなところでは、トレーニングをした日に押されるスタンプであり、ラジオ体操のスタンプを必死で集めた小学生の頃を思い出させてくれる。ゲーム的にはトレーニングを重ねることで、利用できなかったゲームが開放されるなど、征服欲を煽るような演出がされている。もちろん、実際に体重が減ればそれはこの上ないご褒美になるだろう。

ここに挙げたようにWii Fitは楽しくエクササイズを行い、しかもそれを毎日続けさせる工夫が多く盛り込まれている。ダイエットをするためいストイックに体をいじめるのは過去の話で、楽しくトレーナーに叱咤激励されながら体を動かし、心身ともに健康な状態を保つ──、任天堂が考えるダイエットはとても魅力的だ。Wii Fitページ内の『社長が訊く「Wii Fit」』には一体どういう考えでWii Fitが企画され、形を与えられていったかが詳しく解説されている。こんな製品を出されてしまうと、やはり任天堂はさすがだと感嘆せざるを得ない。