ドラゴンクエストのトーラス世界

fj.rec.games.videoあたりでさんざんネタになった話だが、最近ふと思い出したので紹介しておくことにしたい。

初期の頃のドラゴンクエストFinal Fantasyでは、世界が2次元平面マップ上に表現されていた。矩形型のマップは上辺にさしかかると同じX座標の下辺にワープし、同様に左辺にさしかかると同じY座標の右辺にワープするようになっていた。この挙動はゲーム的に極めてわかりやすいが、地球をメルカトル図法で平面にマップした場合にはこのような挙動にはならない。メルカトル図法において、たとえば右上にさしかかると左上あたりから出てこなければおかしい。




上辺と下辺、左辺と右辺でワープすると言うことは、ドラクエ世界では図1*1の上辺Aと下辺B、左辺Cと右辺Dが繋がっていると考えられる。そこで上辺Aと下辺Bを繋げてみると、図2のように円筒状となる。



ここでさらに左辺Cと右辺Dを繋げてみると、最終的に図3のようなトーラス(ドーナツ型)となる。ドラクエ世界は実はこのようなトーラス型の惑星の上に成り立っていたのである。


トーラス世界では、極にあたる内側の世界は一日中日光に当たることが無い闇の世界である。外側の世界は半分だけが日光が当たる光の世界(昼)、残りの半分は闇の世界(夜)となる。すなわち図4に示すように、いつでも全世界の3/4は闇に覆われているわけだ。竜王は世界の半分をくれると言って、闇の世界をくれたわけだが、これだと勇者3/4、竜王1/4という配分になる。これだけの勢力差があれば竜王を蹴落として世界征服するのも夢ではない。




一方、与えられる闇の世界が常に太陽が当たらない内側の世界だけだと考えると、面積比はちょうど半分ずつとなり「世界の半分」という竜王の言と適合する。この場合はさすがに勇者側の劣勢は明らかであろう。やはり甘言に惑わされてはいけないようだ(ゲームオーバーになるし)。

トーラス世界では内側と外側で重力に大きな違いが出ることが予想される。内側では頭上に足下とほぼ同等の質量があるわけで、万有引力が互いに相殺しあうこととなる。それでもみんな立って歩いているところを見ると、トーラスは極めて高速度で自転しており、内側世界で生活するのに十分な遠心力を生み出していると期待される。ゲームをしていると極めて短時間に昼夜が入れ替わるが、あれはこのトーラス世界の自転速度を忠実に再現した演出だったのである。

一方で、外側世界では足下にほぼ倍の質量があるが、距離が2倍になるため*2万有引力はほぼ半分となる。ここに内側の何倍もの巨大な遠心力(距離に比例)が万有引力を振り切り、全てを宇宙空間に放り出してしまう。内側世界を優先すれば外側世界が破綻し、逆に外側世界を優先すれば内側世界が破綻しそうだ。自転速度を調整して遠心力の大きさを上手く設定できれば、内側も外側もそれなりの重力を得ることが出来るかもしれない。ただそれでも、極と赤道直下以外は巨大な遠心力が斜めに掛かるのでちょっと生活に苦労するだろう。

惜しむらくはこのトーラス世界、力学的な安定とはほど遠く、遠からず巨大な遠心力に抗しきれずばらばらに砕け散ってしまうか、巨大な重力に抗しきれず内側世界が潰れて球体になってしまう。勇者のもたらした平和は長続きはしないようだ。

*1:図1〜図3はGNU GPLで配付されているMUFFIL-1 Verheftung und Form des 2-Torus.pngの一部分を切り出したものであり、図4は一部改変を加えたものである。

*2:初出の考察では万有引力及び遠心力の推定において距離を無視していたが、無視してはダメっぽいので修正。