新幹線の技術盗むなんて、そんなたいしたことやってませんって

産経新聞は『新幹線の技術盗む? 中国が300キロ列車完成』として、中国山東省の鉄道車両メーカー、南車四方機車車両が発表した、300km/h走行が可能な初の国産列車「和諧号」に、新幹線の技術が登用されている可能性を指摘した。

同社は川崎重工業などと提携、東北新幹線の「はやて」をベースにした車両の技術提供を受け、高速旅客列車を生産している。新華社は「和諧号」について「外国の技術を導入、吸収した上で中国が自主開発した」と伝えており、日本の技術がベースになっている可能性がある。

http://sankei.jp.msn.com/world/china/071222/chn0712221844006-n1.htm

公開された写真を見ると、南車四方機車車両が川崎重工から技術供与を受けてライセンス生産中のCRH2に比較して、ライトが増設されているぐらいしか違いがない。実際型番もCRH2-061CとCRH2の派生型であることを示している。

Wikipediaによれば、CRH2のベースとなった新幹線E2系電車(長野・秋田・東北新幹線車両)が275km/hなのに対し、CRH2は250km/hに留まっている。これはE2系が電動車(M)と付随車(T)の構成比(MT比)が8M2Tなのに対し、CRH2は4M4Tであるため動力が不足しているからだ。

動力が不足しているのなら補ってやればよい。CRH2-061Cは下図*1に示すようにMT比をCRH2の4M4Tから6M2Tに変更。これにより300km/hを達成した。中国がやったことは電動車の比率を増やし、見た目を変えるために先頭車両にライトを増設しただけだ(見た目を変えようにも、空力設計ができないのでCRH2の形状は保たざるを得なかったようだ)。電動車を増やせば最高速度として300km/hを達成することはたやすい。もともとCRH2の技術はブラックボックスのない完全な技術供与という形で行われており、中国側が新たに開発した技術は無きに等しい。



CRH2は全60本が導入されることが決まっている。最初の3本は日本で製造され、完成品として中国に引き渡された。次の6本は部品の状態で引き渡され、中国で組み立てられた。残りの51本を南車四方機車車両がライセンス生産中なのだが、高度な技術を要する一部の部品は日本から輸出している。CRH2-061Cにおいても状況は同様であろう。日本から導入した技術を言われたとおり利用して、言われたとおりの車両を作る。ちょっと編成変えてライトつけてみました〜という程度だ。小手先の対応と言わざるを得ない。

「外国の技術を導入、吸収した上で中国が自主開発した」というCRH2-061Cは結局ほとんど日本の技術のままであり、自主開発というのもおこがましい。少なくとも今のところは。

*1:MT比の変化が直感的に理解できるように描画したものであって、編成は必ずしも正確ではない