白熱電球は製造中止へ

東京新聞によれば政府は温暖化対策の一環として白熱電球の国内販売を中止、電球型蛍光灯への転換を図っていくことを明らかとした。全世帯が電球型蛍光灯に切り替えた場合の温室効果ガス削減効果は、家庭からの排出量の1.3%にあたる約200万トンと見られる。もっとも2005年度の日本の温室効果ガス排出量は13.6億トンであり、目標達成にはさらなる努力が求められる。

たしかに電球型蛍光灯のほうが白熱電球よりもエネルギー利用効率は優れているが、値段が10倍以上する上、明るくなるまでに30秒〜1分ほどの時間がかかる、発色が電球と比べて不自然、調光機能がある蛍光灯は限られている、そもそも物理的形状から白熱電球でなければ入らない、等々の問題がある。

一般家庭のトイレにおける照明としては白熱電球が使われることが多いが、これは短時間の利用が主だからで、仮に電球型蛍光灯に変えるとトイレで明るくなるまで30秒以上待たされることになる。

また、蛍光灯の出す光は白熱電球のそれに比べてスペクトルに著しい偏りがあり、演色性で劣っている。次の図はスペクトル色々: 照明とディスプレイから引用したものだが、白熱電球が幅広い波長に渡って満遍なく放出しているのに対し、蛍光灯は水銀の発色による鋭いピークが見られる。次世代照明として期待されている白色LEDは高輝度の青色LEDと黄色の蛍光体の組み合わせで構成されているため、青色LEDによるピークと蛍光体によるピークの2つを持つ。




同じ白色でもそれを構成する波長に違いがあるため、光の下で見る物体の色が異なって見える。家電Watchの『食卓で映える電球型蛍光灯を求めて』では、東芝、松下、NEC製の電球型蛍光灯を比較しているが、各社の見え方が著しく異なり驚く。下比較写真は上記記事よりの引用である。



この中ではNECホタルックボールが最も自然な色合いを再現しているようだ。東芝や松下製の電球型蛍光灯は青っぽく見えてしまう。色が重要な現場では、こうした変化を許容できない部分もあるだろう。NECホタルックボールは点灯後の明るさの推移でも他社製品と比べて優れており、現時点で電球型蛍光灯を購入するとすれば、第一候補となるだろう。

こうした欠点を考えると、全てを電球型蛍光灯に置き換えるのは無理がありそうで、特定用途における白熱電球の利用は継続されるだろう。とはいえ、2006年度に販売された1億3500万個の白熱電球のうち、電球型蛍光灯に変えた方がメリットが大きいモノも相当数含まれると考えられることから、切り替えを呼びかけていくこと自体は良い考えだと思う。

地球温暖化はもはや看過できないところまで進行しており、人類は早急に温室効果ガスの排出量の削減に取り組まねばならない。実際なりふり構っていられない状況に追い込まれるのもそう遠い未来ではないと思うが、国民に犠牲を強いるにはまだ危機感の共有が足りない。2008年は京都議定書の約束期間が始まり、洞爺湖サミットも予定されていることから、政府の温暖化対策がより積極的な方向へ変わっていくと見られる。持続可能な社会を実現するためにも、思い切った英断がなされることを期待したい。